第18話 けーちゃんの貢ぎグセ 6

母親の登場から間をあけず、今度は警察官が慌てた顔で近寄ってきた。

通行人の誰かから通報でも受けたのかもしれなかった。


「どうされましたか?!」

泣きじゃくる少年を腕に囲む母親に警察官が聞く。

「この子が突然、うちの子を自転車から引きずり下ろしたんです。うちの子は何もしていないのに!」


その言葉を聞いてようやく、萌は自分が何をしたのか理解した。




それからはあっと言う間のようで、恐ろしく長かった。

萌と友人達は6人まとめて近くの交番まで連れて行かれた。移動する間も、着いてからも、萌達は互いに一言も口をきかなかった。

きけなかったと言った方が正しいかもしれない。

これからどうなってしまうのかと思うと怖かった。


そして、交番に着いてからはそれぞれに別の部屋で事情を聞かれた。


話が終わると、今回の事に関して関係が薄いと判断された友人達は、警察に呼び出されたそれぞれの親に連れられて帰って行った…らしい。


友人達がいつ頃帰ったのかは、ずっと一人、質問を受けていた萌にはわからなかった。


何度もなんども、「何故そんなことをしたのか」と聞かれた。人を変えて、何度もなんども。


しかし、萌は質問に答えられ無かった。

自分でも自分のしたことがわからなかったのだから答えようが無い。


しかし、そうとはとらえなかった警察は、

「お母さんが来たら、お母さんになら話せるよね?」と言ってきた。


こんな大事おおごとになって母は悲しむだろうと思うと、会うのが怖かったが、萌の窮地きゅうちを救ってくれたのは、意外なことに母だった。


「息子と二人で話をしてもいいでしょうか」


萌から話を聞けず、八方塞りだった警察の人達は部屋に二人だけ残して席を外してくれた。

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