本日は仏滅凶日!

第7話 本日は仏滅凶日! 1

***


--リーン…


澄んだ音を立てながら教室の床を転がって行く鈴を、

木芽きのめ もえは唖然とした顔で見つめた。

その表情はたかだかスマホのストラップが壊れた程度のことに対してはあまりにも真剣で相応しくないものだ。


「これ、大事なものなの?」


そんな萌の様子を見て、直るかなと言いながら同じクラスの澤野 唯子が鈴を拾って手渡してくれた。

が、萌は何の反応も返さない。


「お前、礼くらい言えよ。」


見かねた友人の京平が萌の肩をぱんっと叩いた。

けれど、ハッとした萌が口を開く前に、

「澤野さんごめん。こいつ重度の叔父コンでさ、大好きな叔父さんからのお土産が壊れて相当ショックみたい」

と、勝手に理由をつけて澤野に謝ってしまった。


「…へ、へえ。そうなんだ」


「澤野さん、ありがとう」


遅れて返したお礼の言葉に澤野は二ヘラと微妙な引きつった笑みを残して、じゃあねと去って行った。


「京平ナイス。澤野さんめっちゃ引いてたじゃん。これで萌と言う強力なライバルが減ったな! 澤野さんカワイイもんな〜」

横からリョウマまでもがちょっかいを入れてくる。


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