戻らない道程~錯綜

翌朝、城田さんから電話があり、予定通り父をだまして連れて行き、帰さない方向で決定したと言われました。どうも私のサインが無くても大丈夫だとおっしゃった。父の特養入所に向けてあっけなく進んでいくようにこの時は感じました。

後は父がこの日の夕方、抵抗なくお迎えの指示通り、近隣ショートステイに出発してくれるかどうか?。。しかし、これも夕方城田さんから電話があり、父は二~三日分の荷物を持って大人しく出かけてくれたと聞き、安堵しました。

それから三日経ってこのまま父はロングステイに入っていくのかと言う時、再び城田さんから電話があり、特養に入る前の小平でのロングステイに切り替わる部分だけ私のがサイン欲しいらしいと聞き、私としては話が違う訳です。今なら、まだ、後戻りできる。やはり今回は諦めて団地に明日にでも戻した方が良い。とお願いしました。で、翌日、生活保護の管轄は生活支援課とも聞いていましたので、そちらの父担当の井本さんに電話をかけると、話が全く違いました。「特養に入れるなんて決まっていません。まず、身内のあなたが探してきて、その希望する場所に入れるかどうかをこちらがお調べする。あなたはお父様とは縁を切るようにおっしゃっていた。それともお父様の面倒を看るおつもりがあるのですか?」。。井本さんは一度区役所の個室でお話した事の確認で私の入院前に電話をしてきた方なのですが、父とのプライバシーを話してその時には私の目の問題もありましたからその話もして、父の面倒はみれないと再度話しました。しかし、父との近親姦の歴史に関しての話を「それだけが理由ですか?」等言われ、私はとても嫌な気分になるほどだったのです。

今回は強気に言わせてもらいました。「例えばレイプされた被害者が加害者の老後をどうするか。考えろと誰がいいますか?例えばレイプだったら監禁でもされない限りたった一回。一日で終わる被害です。加害者が親の場合、家が檻になるんですよ。。あの手この手で私は逃れられなかったのです。何故私が父のしかもあんなに暴言ばかりの父の手助けをしなけりゃいけないんですか?それにどうしてケアマネさんとあなたのいう事が食い違うんですか?この話は無かった事にしてもらいます。速やかに父を団地に連れ帰るなりなんなり勝手にしてください。私は手を引きます。」と言って電話を切りました。まだこの時、こんな風に父を切り捨てる言い方をしている自分が悲しかった。

すぐに福祉課の所長から電話があり、「井本にはまだ伝達されていなかっただけでサインもなしで大丈夫です。区の方で何とかします。」と言われましたが、私はやはり時期尚早過ぎると言い、話を元に戻してほしいと願いましたが、このチャンスを逃したらもったいないと押し切られました。

続いてケアマネさんからも連絡があり、今後は井本さんではなく、所長が窓口になるから安心してと言われ、父は近隣施設でのロングステイ期間に入っていきました。

城田さんからのこの時の指示は合鍵をもっているならそろそろ団地の片づけをはじめてくださいというものでした。。「そんな事、始めちゃっていいのですか?何か金目のものがあったら換金したりしないのですか?」私はその後でもかまいませんと言うと、役所はそんなことはしない。退去費用は出るけれど撤去費用は原則出ない筈。と言うのです。「そんなはずは無いでしょ。。身寄りのない人だっているのだから」と言うと、「何か大切なものは持ち出しておかないと捨てられちゃいますよ。」と言われました。確かに。。佳代さんのアルバムや日記がある事も知っていました。{あれは他人には見せたくない。。}

それに佳代さんの仏壇。それから父のスチール写真には他の芸能人も写っていますし、ああいった写真はテレビ局に版権がある事も知っていました。むやみに捨てられて悪用でもされたら大変なことになります。{父の事はもう知らない}と思ったところで何をどれくらい不払いが残ってしまうのか?その把握ぐらいはしておきたいとも思いました。止められる定期購入も止めなければなりません。

退院後の診察もありますからそれが終わったら作業に入りますと答えました。


今思うと、流れに流されていたなぁ。と反省しきりですが、やはり、このご時世、特養に入れるといった餌を鼻先にぶら下げられ、ふりまわされていたのは、いくら父を憎らしく思ってもどこかで野垂れ死にだけはされたくないという気持ちはどうしても残っていたのだと思います。片付けをこの後、していくのですが、それも持ち出したいものがあるのと、他人様になるべく迷惑をかけたくないとした気持ちにも揺さぶられていたのだと思います。

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