戻らない道程~最後の会話

夕方の電話で城田さんから聞いた事。。

明日の夕方父を近隣の城田さんの事務所所有の施設で二~三日ショートステイをする事になるが、それは父に対する騙しで、実際はもう少し長く、おそらくは一週間~十日ぐらいステイした後、小平の特養に連れて行き、そこでショートステイ。実際はおそらくロングステイになると思うが適正を見てそのまま特養扱い、もしくは、不適正(暴言暴力などが酷い場合)は精神病院。。と言う風に決まったというのです。ただし、どうも施設の保護者欄に私のサインが欲しいらしく、追々、区役所に来て手続きをしてください。と言う事でした。。

私には区の前の所長時代に話し合った通り、父の保護者にはならない事。区が後見人になるという約束があります。その時は父には五~六千万円のお金が残っていて余れば寄付をする。余らなければお任せするといった約束です。今、父に生活能力が無いという事でも、今に始まった事ではない。父の機能能力はハッキリ言って同じレベルです。違ったのはお金が無くなっただけ。それなのに、私が介護している時にはトラブルなくお買い物ができている。すなわち生活能力があるという判断で要介護度すら上げてもらえなかった。。父の要介護度が上がったのは私が手を引いてからです。。父の能力が殆ど変わらずともです。

私が言ったのは、「時期尚早すぎる。。三年間全く会わず、父からのSOSの日と今朝の一日だけ短時間会って、私の入院やらでそれまでの状況をまだ何もつかめていない状態で、ハイ。里心が付くからこのままお父さんとは会わない方が良い。だましだまし戻れないように連れて行く。。でサインだけはしてくれ。ではとてもサインは出来ません。拒否しますから、二~三日で一旦父を戻してほしい。」と言いました。。


城田さんは少々困った様子で「明日、サインできない旨役所に報告するが、せっかく特養が見つかったのだからこのままお父さんを連れていけるように何とかしたい。。」と言っていましたが、「今の状況で私はサインできない。」と言って電話を切りました。


まぁ私がサインをしないと言ったのだから今回の話が流れるのだろうけれど、サイン無しで行けるのならこのまま行かせた方が良いのだろうと思うと、痩せこけた父の姿が頭に浮かび、明日の日中、伊勢丹へでも連れてって食事をして映画でも観させようかと思いだちました。おそらくこれが最後になるだろうし、それと父に聞き出したいこともありました。それは株の事。。。

私が介護を手放す頃、父は佳代さんから相続した株を現金化して預金通帳にお金として入れたいと私に話していましたが、手堅い株でしたし、何だか私も面倒でそのままにしておいたら?と言っているうちに私が介護から手を引いたのですが、その直後、友人の手を借りてケアマネさんや事務所迄変える事をやってのけた訳ですから、もしかしたらその方の力を借りてもう現金化しているのかもしれない。。「金ならまだある。」あれは父の妄想なのか?株の事なのか?

もしあるとしたら、水道代半端分を除いて三十四万円それに電気代、お家賃だって狭間の分が未払いになる。モバイルなどの契約もしているようだし、定期購入。。の品々の支払い、後ウォーターサーバーも契約しているようだった。。それら未払いを解消できれば他人様に迷惑がかからなくなる。。余るようだったら生活保護のやり直しだってしないと、不正受給になってしまうのです。お金をきちんと清算せねばなりません。。

父に電話しました。。出てきた父が言ったのは。。

「お前毒を盛りやがったな。お前が持ってきたおむすびを食べたら吐いた!」

「そんな。。毒なんか。。それより急に一気に食べたんじゃない。お医者には行ったの?」と私は切り返しましたが、「病院は手配済み!」と父。。朝より酷い剣幕で。。それでも気を取り直して、翌日伊勢丹に行ってみないか?誘ってみましたが、行く足が無いというのです。「行きは電車で私も一緒。。帰りはタクシー代を奢るから。。」と言うと、「あなた!目が見えないんでしょ。、目の見えない奴(父はメクラと言っていた)に用は無い!」

この言葉を聞いて、父は私を生涯支配し続けたかったのだろうと思った。支配できなくなった以上、もう用は無いようです。どうやら父にとって私が娘だった事など無かったのでしょう。。父にはなるようになってもらうしかない。。

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