パフォーマンスだけでなく。。

初任者研修の最後の試験は一発合格しました。本当にホッとしました。

これが追試などになっていたなら?職場での雰囲気はもっと悪化したと思いますから。。

宮本さんにはなんでも相談していました。

「北尾さんが体操とかパフォーマンスばかりでヘラヘラしてるとか、そんなのじゃない事は私がよくわかってる。帰り際ポツンと一人で寂しそうにしている人が居て、みんなトイレ誘導ばかりで気配りが足りてないな~と思ってたら北尾さんが声掛けをして、その方の笑顔を引き出し、他の利用者様がやってるゲームに参加できるようにしてくれたり、そういう目配り気配り、やさしさがあるってことも知っています。」などと励ましてくれました。

体操に関しては、この業界もあちこち出来て、企業としては即戦力になる事はやはりやってほしい。色々あるだろうけれど頑張ってほしいとも言われました。

その頃、兼崎という若い先輩からある事がキッカケで言われました。

ある事に関しては次のエピソードで触れますが。。。

「今までここの現場の何をみてきたのですか?これから北尾さんには決まっている事を決められたとおりに仕事をしてもらいます。私がついて指導します。」でした。。それには流石に閉口しました。

手足縛られて仕事をするなんて。。それにパフォーマンス的仕事以外にしゃべる事が出来ない利用者様などに対する介助の仕方等、私にはアイデアが浮かび始めていた時でもありました。

もっと良い断り方があったのかもしれない。。

しかし、私はきっぱりと「お断ります。」と言ってしまいました。

そんな頃、突然本橋君が同じエリアの別の事業所に移ると聞かされた。

ああ~みかたが一人減っちゃうな~と思った。。

その本橋君の送別会の時、私が出向くと、「お前の座る席はねえぞ!」といわくつきの酒田というドライバーから言われ、私は本橋君に挨拶だけして店を出ざる得なかった。その後、恩師とよく落ち合う渋谷ののんべい横丁で、私の資格取得のお祝いをしてもらい気分を切り替えて帰りました。

介助の仕方のアイデアというのは、お一人、気になっている方が居て、ほとんど笑わない。言葉を発しない。目に表情が無い。。どこか寂しそう。。そんな方に元気になってもらう。。その方への介助のアイデアが浮かんでいたのです。

食事は自力で食べられる筈なのですが食べてくれません。水分もとってくれないのに脱水気味です。。同じテーブルには食事全介助の方がいる。ご家庭ではお嬢様が居ますが、お仕事で忙しい。。この方。。きっと寂しいのだろうなと思いました。

同じテーブルの人の様に食べさせてほしいのです。。きっと。。。

しかし、私たちの介助はその方の残存能力を引き出さねばならない。自力で食べられる方の手助けをするのは、その方の能力を奪ってしまう事になります。

さて。。どうするか!

その方の気持ちになってみました。あの人ばかり食べさせてもらって。私にはちっとも構ってくれない。。そんな声が聞こえてきそうでした。

食事の時間には限りがあります。。最終的には片付けねばならず、最後の最後になってわんこそばの様にどんどん口に放り込まれるわけです。それでも呑み込みが悪いので時間がかかる。。ある時、チャンスが巡ってきました。

時間がかかるから前倒しでささっと食べさせて!と先輩から指示が出たのです。

ある意味ほかの職員は忙しいのでいつも放りっぱなしのようでした。


呑み込みが悪い。。水分補給してくれない。。ならば誤嚥しない程度に口に食べ物がいっぱいになった時に水分をふくませてあげたらどうか?試すと、ゴックンと飲み込んでくれました。すると時間が短縮できると同時に水分だけでは摂取してくれない水分補給にもなるのです。

その空いた時間に質問してみました。「○○さんって下のお名前は何ですか?」

「お話しすると、お口の筋肉が鍛えられて飲み込みやすくなるんですよ~」

等と声掛けもしました。

ある日の事。。「ハ・ル・ミ~」と答えてくれた。。そうなってくると他にも聞いてみたいことが!

大阪出身でお寿司が好きで、柴漬けが好きで。。いろんなことが聞けました。。

もう少しだから頑張って食べましょうね~と声かけしたい時。

「もうちょっとやから、キバッテや~」と方言を使ったら、「ブ~~!」とふいて、笑ってくれた。

気づくと、お昼の食事時間が始まると、自力で食べようとしてくれているではありませんか?!残存能力は何も筋力だけでは無かったのです。心の残存能力を引き出さない限り、筋力は追いついていかない。。そんなことを学べました。

その後、ハルミさんはトイレに行きたい時、いつもだったら「トイレ?」と私が聞いて、首の振り方で判断していたのが、おなかを手でポンポンと合図しながら「オシッコ~」と言ってくれました。ある朝、その日はお嬢さんがお休みの日で、私が迎えに行くと、「おはよう~」と言ってくれた。。

お嬢さんは私にも言ってくれないのに。。と驚かれていました。

勿論その方ばかりにかかりっきりになっていた訳ではありません。

でも、そういった事を見る人は見ていてくれていたのです。。

お昼のパート介護士さんたちの中で、お愛想だけでなく私に話しかけてくれるようになり始めました。。。「北尾さんってすごいですね。」とか。。「いっつも笑顔で見習いたい。」とか。。

そして、利用者様たちも。。「あなたの優しさは奥が深い。」「あなた。。苦労してきたでしょ。」「一日中笑顔じゃないの。。中々できない事よ。」「あなたのいう事なら何でも聞くからね。」などなど。。

食後の口腔ケアの時、私の休憩終わりが一時であろうと、一時半であろうと、二時であろうと概ね、入れ歯装着の自力で口腔ケアできない方が残っていました。私は毎日、入れ歯介助をしていたのですが、

ある男性利用者様が「こういうのは汚い。触りたくないっていうのは本音だろう。しかしあんたはいっつも笑顔でやってる。。大したもんだ!」と褒めてくれた。。

しかし、その後、ある一部の人たちからの嫌がらせはどんどん酷くなっていきました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る