第五十六楽曲 第二節
ジャパニカン芸能の男性社員は、ゴッドロックカフェでメンバーを降ろすと東京に帰って行った。胸花をつけた備糸高校の制服姿のダイヤモンドハーレムのメンバーは、店には入らず大和の自宅に上がる。そして卒業証書や通学鞄などはリビングに置いた。
「まだ寝てる……」
ガラッと寝室のドアを開けるとベッドで横たわる大和がいる。それに希が呆れた口調で言った。すると希は何を思ったのかベッドに上がった。しかも立っている。
それを見た古都。彼女までベッドに上がった。しかも古都に至っては……。
「いえーい! いえーい!」
ベッドのスプリングを使って飛び跳ねている。そんなことをしては難なく大和も目を覚ますというものだ。大和はゴソゴソし始め、そして目を開けようとした。するとその時。
「うがっ!」
開けようとした目は片目だけしっかり塞がれてしまった。鼻も半分、口も半分塞がれている。
「うお! のん、過激。ほいじゃ私も」
「んんっ!」
すると生きていた大和の顔の残り半分も塞がれた。完全に視野が無くなって、大和は何事かと思い、両手で目元の異物をどかす。
「んほっ」
声になっていない。大和の目が捉えたもの、それは……。
冷ややかな視線で大和の顔を踏んで見下ろす希と、満面の笑みで大和の顔を踏んで見下ろす古都だ。2人は大和につま先をどかされても口の上で踵を軸に足を回転させ、未だ大和を踏んだ状態だ。しかも制服姿。つまりスカートだ。
「……」
未だに口の塞がっている大和からまともな言葉は発せられない。しかし2人の丸見えのパンツをしっかり確認して、大和の愚息は反応する。因みに美和と唯はベッドの脇で、ベッドの上の光景を傍観している。
すると希が大和を冷ややかな視線で見下ろしたまま言う。
「大和さん、卒業式終わったわ」
ここで大和は2人の踵もずらして口を解放した。但し、まだ踏まれていたいので、あくまでしゃべるためにずらしただけだ。
「そ、卒業おめでとう」
祝福する気持ちは多大にあるが、今の状況には喜びながらも困惑する。元気になりつつある愚息の主張を取り下げる術も知らない。まぁ、端的に言えば大和は現状に興奮している。
「大和さん、卒業したよ?」
すると古都も続く。それは今しがた希からも聞いた。祝辞は気配を感じる2人を含めて、メンバー4人に言ったつもりだが、大和は再度言葉にする。
「卒業おめでとう」
「それは聞いた」
すると返ってくるのは希の冷たい言葉だ。大和は顔を踏むこの2人の意図が掴めない。
「えっと……?」
「約束を守って」
「やく……そく……?」
「私たちを女として見てくれるんでしょ?」
「見てくれるんでしょ?」
冷たく言い放つ希に反して、古都は明るく復唱する。大和はドキッとし、掛布団の下にいる愚息が完全に起き上がってしまった。スウェットにテンションを張って痛いくらいだ。すると希は尚も続ける。
「大和さん、私たちを抱いて」
「かぁぁぁぁぁ」
大和は真っ赤である。とうとうこの時が来たのだ。そして希は畳みかけるように言う。
「4人とも心も体も準備は万端よ。美和なんて気合い入れて調整してきたんだから」
ここで慌てたのは美和だ。しかし美和が視界に入っていない大和は疑問を口にする。
「調整?」
「そうよ。ピルを飲んで生理を遅らせたの。だから美和には、なか――んんっ!」
間に合った。希が低身長で良かった。間一髪、美和は希の口に手が届いて、放送禁止用語を言おうとする彼女の言動を阻んだ。
しかし大和は希が何を言いたかったのかを理解した。いつもならこのまま赤面して硬直するだろう。しかしこの瞬間、何かが大和の中で弾けた。
「うがっ!」
「きゃっ!」
希から可愛らしい声が出る。
「がおぉ!」
「わっ!」
古都から驚きの声が上がる。
ずっと我慢してきた。一番誕生日が遅い希が18歳になる日を待った。加えてそれから数日で迎える高校の卒業式を待った。もう武村との約束に怯えることはない。もう保護者との約束に縛られることはない。コンプライアンスもクリアだ。
大和は上体を起こすのと同時に掴んだ古都と希の足をグッと引き込み、素早い動作で2人と体勢を入れ替えてベッドに押し倒した。古都と希はあれよあれよという間に制服を剥かれていく。――かと思ったら制服は脱がさず2人のデリケート部分だけを大和はオープンにした。なんともマニアックな奴だ。
その光景をベッド脇で唖然と見るのは美和だ。口元に手を当てて半口を開けている。目の前では古都と希が苦悶の声を上げ、痛みに顔を歪め、そして純潔を奪われ、大和に全てを捧げていた。
一方、ここで意味不明な動きをしているのは唯だ。引っ越しのために段ボールが積み上がり、生活感のない部屋のウォークインクローゼットから2組の布団を持ってくる。前日に荷造りをしたのに、わざわざ収納カバーから取り出した。そしてその布団をベッド脇に敷いた。
美和は相変わらず獣と化した大和が古都と希を食い散らかす様を見ているので、唯の動きを気にしていなかった。
「ほわぁぁぁ」
「うはっ……」
血でシーツを染めた古都と希はぐったりとして、ベッドに横たわる。つまり2人の開通作業は終った。そう、大和は古都と希と合体したのだ。すると大和。次の獲物に照準を定めた。ギロッと美和を睨む。
「ガルルルル!」
「ひっ!」
小さな悲鳴を上げて半歩後退る美和。しかし大和の目の色は変わらない。全裸の大和はベッドの上から美和に飛びかかった。
「やっ!」
美和は唯が敷いた布団にそのまま押し倒され、古都と希と同じようにデリケート部分だけを晒され、そして痛みに唸りながら血を流した。美和も大和と合体完了である。
美和に至ってはオブラートで包むこともなく、直撃までさせて。
「えへへ。大和さん」
しかしそんなメンバー3人の惨状を見ても冷静なのはダークホース唯だ。性的なネタは苦手なのにもう1組の布団の上にちょこんと座って、聖母のように大和に微笑みを向ける。唯は場を整えるため冷静に布団を敷いたのだ。
ゴッドロックカフェで車を降りた時から大和輪姦計画は企てられていた。それをノリノリで肉食の2人と隠れ肉食の1人が話していた。尤も結局は、古都も希も美和も大和に食われたのだが。しかしその時すら唯は一切話に入らず終始俯いていた。
既に食われた3人はぐったりして意識が朦朧としている。今の唯の様子に気付いてはいるが、気にする余裕はない。さすがに唯は3人が食われる姿を見て腹が決まったのか、とにかく従順な様子だ。
大和は豊満な唯の胸に飛び込んだ。母性を感じさせる柔らかさだ。そして大和は唯にもまた、溶けていった。唯とも合体である。
「うぅ……、痛いよ……」
唯も抱き終わった頃に古都の呻き声が聞こえる。この時にはもう大和の獣化も解かれていた。すると希からも声が聞こえてくる。
「血を流し過ぎた。レバーが食べたい」
思えば食事もまだである。
「はぁ、はぁ、ご飯……行こうか?」
唯の上に跨ったままの大和は息が乱れている。性欲の次は食欲のようだ。よく食べる。と言っても希が言うレバーに心当たりはない。
「近くの洋食屋さんでハンバーグかステーキでどう? 卒業祝いにご馳走するよ」
「賛成に一票」
古都が仰向けのまま力なく腕を上げた。それに続くように希と美和からも力なく腕が上がる。唯も腕を上げようとするが、上に大和がいるのでできない。しかし中途半端に止まった動作で大和は唯の賛成を理解した。
「リハもしなきゃだから、すぐに服を整えて行こうか?」
この後、大和は服を着て、メンバーは服装を整えて、更に下着を穿いて部屋を出た。
この日は夕方からゴッドロックカフェで貸し切りライブをする。招待制のそのライブは備糸高校の生徒が対象で、ダイヤモンドハーレムのファンが集まる。
それが終わってからは一度締めて、ゴッドロックカフェで3年1組のクラス会だ。これも貸し切りなので、この日は変則営業である。
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