第四十二楽曲 第一節
大浴場は貸し切り状態だった。宿泊客は学園ドラマ出演の10代キャストがいるとは言え、他にシニア層などの客も多数いる。10代キャストは客室からの外出を制限されているし、シニア層は就寝中だ。23時を過ぎた大浴場にはダイヤモンドハーレムのメンバーしかいない。
「いつ見ても唯って破壊力抜群」
「そ、そんなに、見ないでよ……」
横一列になって体を洗っている4人。古都が隣の唯を見ながら唸った。その古都の反対隣の希が古都を覗く。
「古都は成長しないわね」
「むー。どうしたら唯やのんみたいに大きくなる?」
「たくさんオナ――」
ザバッ。
希は言い切る前にお湯を浴びせられた。お湯をぶっかけたのは希の隣の美和だ。希は手で顔をごしごし拭くと再び口を開いた。
「大きいのもいいけど、美和みたいにバランスよく綺麗なのも羨ましいわ」
「ちょ、そんなジロジロ見るな」
「本当だよね……」
狼狽える美和の言葉には反応せず、古都が羨む声を発した。その視線の先は美和だが、そこに割り込む希はメイクが落とされすっぴんで、その表情が素朴で幼気だ。
「そうだ! 唯、背中流してあげるよ!」
すると古都が立ち上がり唯に寄った。この女、膨らみだけはないがそのものは綺麗だし、また全体もくびれていてその曲線美は芸術だ。美和と希は顔を上げながらそう感心する。
「いや、いい! いい! いい!」
全力で古都の厚意を拒否するのは唯である。思わず身を引くが古都はそんなことお構いなしに唯の背後で膝をつく。
「遠慮するなって」
「いいから、古都ちゃん! 本当にいいって!」
「私もやる」
「え……」
すると立ち上がったのは希だ。古都と希の思惑。それは唯の豊満なマシュマロを堪能することだ。唯はセクハラをされることをわかっているので、全力拒否なのである。
「唯、暴れないで」
「のんちゃん、やめて。本当にダメ」
「美和」
すると古都に呼ばれた美和。言葉はそれだけでアイコンタクトを交わすと、美和も動いた。
「きゃっ! ダメ!」
美和が唯を羽交い絞めにする。背中を流すのではないのか? 身動きが取れなくなった唯は両脇に回った古都と希からされるがままだ。
「きゃっ! 前は自分で洗うから! あっ……下はダメ! あんっ! あっ!」
その後、美和も途中で希とポジションを代わり、唯の柔らかさを堪能した。やがて肩を並べて大浴場に浸かる4人である。
「ぶくぶくぶく……」
口までお湯に沈め、膨れた表情を見せるのは唯だ。入ったばかりだと言うのに、既にのぼせ上っている。
「あはは。唯がおこだ」
笑うのは古都だ。とは言え、こうして4人で足を伸ばして温泉に入るのも今までなかったので、皆このひと時を堪能してはいる。
「さ、上がろうっと」
「え? もう?」
立ち上がった希を見て、美和が顔を上げる。まだ湯船に浸かってそれほど時間は経っていない。烏の行水である。
「うん。私にはミッションがあるから」
そう言って希は一足先に大浴場を出た。他の3人はこの後、長く温泉に浸かった。風呂や温泉は好きなようだ。希がそれを嫌いだという印象はないのだが、希の行動が解せない3人だった。
しかし4人部屋に戻って3人は絶句する。そして希が早く風呂を出た理由を理解した。
「た、助けて……」
なんとそこにいたのは大和だった。いったい希1人でどうやってこの状況を作り上げたのか、どうやって大和をこの部屋に連れ込んだのか、3人は唖然とするばかりだ。
大和も風呂上がりのようで浴衣だ。しかしこの大部屋にいる大和は正座をしていて、なんと後ろ手で縛られている。しかもそれは正座した足首に固定されていて、完全に身動きが取れない状態だ。
そして希だ。浴衣は前が開いた状態である。ブラジャーもパンツも丸見えだ。どうやら大和を縛っている帯は希の帯らしい。大和は後から入って来た3人に慈悲の目を向けていた。
「揃ったわね。今から逆輪姦をするわよ」
――やっぱり本気だった。
実際にこの光景を見て、希の本気度を改めて痛感する3人である。
「バ、バカ! 止めろ!」
大和は身をよじるが、帯はきつく締められていて、解ける様子がない。すると古都が動いた。
「えへへん。ちゅっ」
「う……」
まずは古都から大和の頬への先制口撃だ。それを確認して希も「ちゅっ」と大和の頬に口撃をした。すると火が付いたのか美和も移動し、大和の背中から抱きついた。
「ちょ! ちょ! マズいって!」
「何もマズくないよ? 私たち真剣にお付き合いしてるじゃん」
事も無げに言う古都は横から大和に抱きついて大和の肩に頭を預ける。
「ダメだって!」
尚も抵抗を口にする大和だが、するとそれまで唖然として立っていた唯が動いた。唯一の草食系だ。大和は唯に慈悲の目を向ける。すると唯は恥ずかしそうに大和の正面にちょこんと座った。
「えっと、私は、まず、見学から」
「そ、そんな……。唯まで……」
「ふふ。観念しなさい。古都、泉さんから聞いた大和さんのウィークポイントは?」
「は!?」
希が古都にそんな質問を向けるものだから、どういうやり取りをしているのだと大和は焦った。
「えっとね、大和さんはチクビを弄られるのが弱いみたい。指でも喜ぶけど、舌だと効果絶大だって」
「ちょっ!」
間違いがまったくないその情報に大和は真っ青になった。そして顔を赤く染めた。どっちだ?
「ふーん。こうかな?」
「うはっ、ちょ、止めぇっ!」
「美和もどうぞ」
「う、うん……」
「あはっ。後ろからも……。両方はキツイ。ダメだって!」
悶える大和である。手首は足首に固定され縛られ、首は横から古都にロックされ、反対からは希、そして後ろからは美和に弄られる。更には正面に顔を真っ赤にして凝視する唯。大和はテントを張った。
「そろそろオープンしようか?」
「そうね、古都」
すると何の合図もなしにぴったり息を合わせて、大和の浴衣を左右から引き下ろした古都と希。阿吽の呼吸だ。大和の上半身は晒された。
「ほう……」
「ぐふふ」
ゲスな笑みを浮かべる希と古都。後ろから抱き着いていた美和は突然の肌の密着に心臓がバクバクだ。正面の唯は口元に手を当てて目がギンギンである。
「やぁまとさん!」
すると古都が正座している状態の大和の膝に乗った。そして首に両手を回す。その美貌にうっとりする大和である。古都は頭を下げ、横の希が反対側のウィークポイントに向かい、その麗しい唇を近づけた。
いや、そんなことではダメだ。大和は必至で理性の糸を手繰り寄せる。そして声を張った。
「これは絶対ダメだ! スキャンダルになる!」
なかなか頑張る男だ。するとぴくっと反応して古都と希の動きが止まった。効果のあるワードのようだ。
「これは法に触れる!」
「なんで? 私たち真剣交際してるよ?」
古都は顔を上げ、大和を真っ直ぐ見据えて首を傾げる。
「こないだ大和さんに夜這いをかけた時とは違うよ? 曲も作ったんだから、もう大人にしてくれてもいいでしょ?」
「君たちと真剣にお付き合いさせてもらってるのは間違いない。僕にいい加減な気持ちは一切ない」
これには安堵と共に喜びを感じるメンバー。そのまま大和の声に耳を傾ける。
「けど客観的に見て、4人と同時に交際してることは世間から認められない。だから18歳未満の君たちとの体の関係は法に触れる! ……と思う」
そう言えば昨年、華乃にも言われたとメンバーは思い出す。
「だからこれは熱愛発覚なんて通り越した大スキャンダルだ。メジャーデビューが叶わなくなる」
そもそも4人と交際している時点で大スキャンダルだが。ただこれを言われては真剣な表情になるメンバー一同。落胆もあるが、襟を正す気持ちの方が強くなる。すると体勢を変えないまま古都が問う。
「それなら、18歳の誕生日が来たら私たちをもっと女として意識して抱いてくれる?」
「ごめん、それも無理。誕生日はそれぞれメンバーに差があるから」
先鋒にならなくて安心したような残念なような、複雑に思うのは誕生日が来月の唯だ。
「むー。じゃぁ、のんの誕生日が来たらいい?」
「うぅ、それなら親御さんとの約束があるメンバーもいるから、高校卒業を待ってもいいんじゃ……?」
希の誕生日はメンバーの中で一番遅い2月だ。それから数日で高校の卒業式を迎える。
古都と大和は睨み合うように見つめ合った。他のメンバーはそのやり取りを見守る。
「わかった。高校卒業まで待つ」
「本当?」
「うん。それだけ私たちのことを大事に想ってくれてるってことだよね?」
「それは誓ってもちろん」
これには笑みを浮かべたメンバー。どうやら納得したようだ。
こうして大和はやっと帯を外してもらった。そして自室に戻りどっと疲れを感じて眠った。
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