間奏 ドラムソロ
希のソロパート
夏休み最後の日曜日の話だ。ここは巨大テーマパークで夏期営業しているプールの更衣室。私はバンドのメンバーと一緒に来ていて皆で着替えのためにここにいる。
「すごっ!」
声を上げたのはバンドメンバーの古都だ。タンクトップにパンツ姿でロッカーの前をうろついていて、これまたバンドメンバーの唯の背中に回ったのだ。
「なっ! ○カップ!?」
「あわわわわ……ちょ、ちょっと、古都ちゃん……」
上下共に下着姿の唯の背後からブラを引っ張る古都。どうやら唯の胸のカップサイズを確認したようである。はしたない奴だ。とは言え、唯の大きさは目を見張るものがあり、私も気になっていたからその情報はちょっと得した気分だ。
古都は御転婆だし天真爛漫だ。こないだはブッキングを賭けて自分の処女を持ち出したと言うからアホだ。とは言え私ももし、古都とその場に一緒にいてそんな悔しいことを言われたら彼女の意見に乗っかっていただろう。
こんな破天荒な古都だがバンドのリーダーでもある。破天荒な奴だが、暴力に対して暴力を返すことはないし、そして暴力に屈しない奴だ。更に彼女の見ている先は私達の理解が及ばないところにあり、しかしそれが魅力的で、どんな世界を見せてくれるのかワクワクする自分がいる。
鬱陶しい奴だが嫌いではない。実際に今日の予定も古都が言い出したことだと聞いているし、このプールという予定に私達のプロデューサーである大和さんと一緒に来られたのは大きい。そう、大和さんも一緒で彼は今、男子更衣室で着替えをしている。この後私の水着姿で悩殺してやる。
と思っていると……
ポロン
「うぇーん……」
張りがあって弾力のありそうなマシュマロが開放された。そして直後に唯がそれを抱えて屈み、恥ずかしそうに喚く。なんと、タグを見ていた古都がはち切れんばかりのそのブラのホックを外したのだ。いや、古都が触るから実際にブラがはち切れたのかもしれない。
申し訳ないがそのポロンの映像に一瞬目を奪われた。横を見てみるとこれまたバンドメンバーで上下下着姿の美和も目を奪われている。
「うお。たぷんたぷん」
唯が自分の胸を抱えているにも関わらず、それを下から持ち上げる古都。何をやっているのだ、こいつは。そのたぷんたぷん、私もやってみたいではないか。
恥ずかしそうに身を捩る唯は私のリズム隊の相棒で、今の様子を示すとおり恥ずかしがり屋だ。それでも頭はいいし、楽器の経験が豊富で信頼している。そして胸がでかい。
「よし、次は……」
そう言って私と美和を品定めする古都。身構える私と美和。美和とお互いに目を合わせると「どうぞ、どうぞ」と心の声で譲り合ってしまった。
美和は普段クールでとても美人だ。特に理由はないのだが、バンドの中では何かと私と絡むことが多い。合宿では2人で合同練習をしたし、ライブハウスにブッキングのお願いに回った時は美和とペアを組んだ。カッとなった時に助けてもらったことが何度かあり感謝している。
「きゃっ」
その美和の悲鳴が聞こえたかと思うと、美和は古都から抱きつかれていた。必死で胸を押さえている。しかし、美和から古都が離れた時、古都の手には美和のブラが握られていた。どうやら勝者は古都のようだ。
「ふむふむ、○カップ。隠してないで見せてよ~」
「いや! こっち来んな」
必死で胸を隠す美和だがごめん、古都がブラを抜き取った時見えてしまった。そして私は感動した。大きいとは言えなくも小さくもない美和の胸だが、とても形が綺麗だった。更にトップも理想的な色と形をしていた。ご馳走様。
抵抗する美和を諦めて今度は古都が私のもとに来る。私も今、上下下着姿だ。どうしようか。抵抗するのもちょっと面倒に感じてきたな。タンクトップ姿の古都から見えるその膨らみはみすぼらしい。私は唯ほどではないが、大きさには自信があるので古都相手ならここは堂々としてしまおう。
「う……、○カップ……」
ブラを外す手間が省けた。私はバッグからビキニのブラを取り出すと付け始めた。隣で古都が言葉を続ける。
「くそ……、形も綺麗だし」
ふふ、まぁね。さてと……
「きゃっ」
水着のブラを付け終わっていきなり行動に出た私。古都が思わず悲鳴を上げる。油断していたのだろう。私は背後から古都に抱きつき彼女の動きを止めている。
ただ、今私は下がパンツのままなのでちょっとアンバランスな格好だ。まぁ、ここは女子更衣室だしいいか。そんな状態で美和を見ると彼女はもうすでにビキニの水着に着替え終わっていた。
「美和」
「うん」
2人でこの4文字だけで意志の疎通ができた。私の腕の中で古都が暴れる。しかし私は目的を遂げるまで離すつもりはない。そしてまず美和が古都のタンクトップを捲り上げ、脱がせた。上下下着姿になる古都。そして美和がそのまま古都の腕を押さえたので、背後にいる私は古都のブラのホックに指をかけた。
「きゃー! やめろー!」
更衣室に古都の悲鳴が響く。ふふ、古都でも悲鳴を上げることがあるのか。なんだか痛快だ。そして私は一思いに古都のブラのホックを外した。すかさず美和が前から古都のブラを抜き取る。見事な連携プレーだ。
「ちっさ」
「○カップ……」
心無い美和の一言。まぁ、私も美和の手に握られた古都のブラを見てサイズを口にしてしまったのだが。更にはビキニに着替え終わった唯までそれを横から覗く。その私達を、胸を押さえながら涙目で見る古都。
「うぅ……。ひどいよぉ……」
自分のことを棚に上げてよく言う。それに今更胸を押さえたところでしっかりトップまで見たから。ただ、小さかったけど、綺麗だったな。こいつは何もかもが上質なのか。世の中不公平だ。
「古都ちゃん、気にしないで」
励まそうとする唯だが、でかいあなたが言ってもそれは嫌味にしかならないのでは……。
そんな賑やかな着替えを済ませて私達は更衣室を出たのだ。皆色とりどりのビキニ姿だ。こうして見るとやはり唯のでかさが目立つ。大和さんにアピールしたかったのだが、唯がいるのでうまくいくだろうかと一抹の不安が過ぎる。そんなことを考えていると隣を歩く美和が徐に聞いてきた。
「そう言えば、勝さんは今日のこと何も言ってこなかったの?」
その名前を耳にして一瞬足が止まりそうになる。そして思い出される家での朝の喧騒。
「はぁ……」
「お察しします」
思わず溜息が漏れた私に、深く詮索せずお悔やみを口にしてくれた美和。ありがたい。
日曜日なのでお兄ちゃんは今日、休日だ。水着を鞄に詰めて集合場所のゴッドロックカフェに行こうと家を出る準備を済ませた私。どこで聞きつけたのか義兄である勝君はダイニングで朝食を取っていた私に問い詰めてきたのだ。
「希! 今日プールなんだって!?」
「……」
私は何も答えなかった。すると対面式のキッチンに立っていた義母の玲子さんが両手を合わせ口パクで「ごめん」と言った。あぁ、情報元はここか。
「俺も――」
「ダメ」
お兄ちゃんが言い切らないうちに拒否を示してやった。
「だって希の水着姿見たいんだよ」
「……」
無視。
「じゃぁ、今日は俺も予定変更しようっと」
「むっ」
私は嫌な予感がしてお兄ちゃんに顔を上げた。お兄ちゃんは呆けた顔をしている。
「勝手に付いて来たら頚椎」
「げ……」
「合宿の時みたいにストーキングしたら頚椎」
「う……」
「帰って来たら玲子さんから状況聞くから」
「ガーン……」
勝った。ダイニングテーブルに両手を付いてうな垂れるお兄ちゃんを見て私は満足した。玲子さんも口を滑らせた手前心苦しさがあるから嘘は吐かないだろう。
「あー。大和さぁん。響輝さぁん」
更衣室からの通路を抜けたところで私の回想は古都の声で途切れた。燦燦と輝く太陽の下、トランクス姿で立って待っていたのは大和さんと響輝さん。そう、ナンパ対策のため大和さんは響輝さんも呼んでくれていた。1人につき女子2人なら面倒が見られるだろうとのことだ。
上半身を露にしたその2人はなかなかいい体つきをしている。細身ではあるがしっかりと筋肉がある。ちょっと込み上げてくるものがあるぞ。……と思っていたら途端に屈んで膝を抱えた大和さんと響輝さん。
「どうしたの?」
「いや、別に。あはは」
古都が心配そうに寄ると乾いた笑みを見せる大和さんだが、それは響輝さんも同様で、これはもしかして悩殺成功か? と思った。ただ、誰に対してなのか、もしかすると4人全員になのかわからないのが残念だ。
まぁ、いい。今日は一日大和さんに、普段はなかなかしないボディータッチでもしてアピールするかな。
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