第23話 王子様を探せ!

元カレ井原から離れたいその一心で婚活を始めようと決意した咲良は、大学時代の友人、美奈恵にその旨宣言した。

「誰かいい人いたり良さそうなパーティあったら教えてね」

美奈恵は積極的に合コン街コンにも参加していて、その筋の情報に詳しい。

咲良も相席屋に行こうとか以前誘われていたが、基本臆病なのでなかなか踏み込めずにいた。

そしてもう一つ教わったのが、ネット婚活だ。

「これなら時間ある時にまずはメールして、気があった人とか気になる人とは実際会って話してみたらいいし。サイトの中でメールのやりとりするから個人情報も守れるよ」

「ふーん…そうなんや」

仕事帰り久しぶりに会って、ファミレスで食事をしながらいろいろ教わる。

「ちなみに美奈ちゃんはいい人と出会えた?」

「うーん、なんだかなー。うちはまだ元カレ引きずってるから、どうしてもその人と比べてしまうからあかんねん。つきあってほしいとか言うてくれた人は何人かおったんやけどな」

彼女の中では、元カレ以上の人という存在がなかなか現れないらしい。

1度もその彼と会ったことない咲良は、そんなに想い続けるなんてどれほどの人なんだろうと想像が膨らむばかりだ。

咲良は自身が飽きっぽい性格なのとつきあった相手がダメンズパターンばかりだったので、そんなに誰かを一途に思い続けたことはない。

「登録は無料やし、気分転換くらいの軽い気持ちでやってみたら?」

「タダならいっかな。いやんなったらすぐ辞めたらいいし」

プロフィールと写真を入力し、後は本人確認の身分証明書の写真を登録して、審査を受けて完了。

「えー、こんなんでほんまに連絡あるんかなー?」

「まー飲み友達くらいできたらいいよね。このままずっとひとりやったら寂しいし…。結婚相手見つかったら就活もしなくていいし」

美奈恵は仕事を少し前に辞めたばかりで、今はフリーターをしている。

貯金もあるし時間にゆとりがあるので、もっぱら婚活にいそしんでいる。

「うちもさ、きむちゃんみたいに打ち込める仕事見つけたいよ。そしたら男なんて別にいいやって思えるのにな。何がしたいかわからんし、自分に何が向いてるかもわかれへん」

「そんな…わたしもそんな大層な気持ちで働いてないよ。給料安いし朝早くから拘束時間も長いし。けど…せやな、以外に長く続いてんのは他探すのがめんどくさいってのもあるけど、なんだかんだで毎日楽しいねんな。いろんな人と話して、笑って、支えてくれて励ましてくれる人がたくさんいるからこそ、やってこれたと思う。平均年齢高い職種やからうちら若手は大事にしてもらえるし」

「そやなー、うちが前いた商社とかは30なったらもうお局オバハン呼ばわりされとったわ。うちは中途で入ったから大卒で入った二十歳そこそこの小娘らに小バカにされて…あの雰囲気の中でやっていかれへんってなった」

「そっか…いろいろあったんやね。結局さ、仕事って人の影響が大きいと思うよ。どんなに条件いい仕事でも、人間関係あかんかったら続けんのしんどいしな。仕事行くのもいやんなったら五月病になってまう」

咲良の頭の中には、坂崎や真行寺、ゆかりやちりさの顔が浮かんだ。

大勢の人がいる会社という組織の中で、みんながいい人なわけではない。冷たくあたる人やキツいことを言う人もいる。

だけど苦しみを分かち合い、喜びを感じあえる人もいる。だからこそ、乗り越えれる壁もある。

しんどい清掃の仕事も、同じ境遇の中笑って深い話もできて、そんな仲間がいたからこそ続けてこれたのだと咲良は美奈恵と話していて感じた。

「人を動かすのは最終的には心だと思う。お金でつながってるだけやとどっかで見切りつけられるけど、この人についていきたいって思える人がいたら、その仕事がんばれるんじゃないかな。美奈ちゃんも仕事でも恋愛でもそういう新しい良い出会いがあるといいね」

「咲良ちゃんもそのサイトでいい人見つかったら教えてよ。どんな人がいい?」

「うんとねー、自己PR文にはこう書いたの。『ささいな日常に喜びを感じあえる人』空がキレイとか、コーヒーがおいしいとか、ちょっとしたことに感動したり喜べるような、心豊かな人が私の理想なの。物より思い出派」

「欲がないなぁ。うちは年収も学歴もせっかく探すなら妥協せえへんで」

2人は全く正反対のタイプなのだ。

お互いに違うからこそ、友人として逆に気が合うのかもしれない。

「本物の王子様はさ、必要以上にブランド物とか高級車で身を固めなくても仕事できますアピールしなくても、堂々としてるし何より世間体とかに囚われず私を大事にしてくれると思うのよ」

咲良の頭の中には、高級品で固めていた井原の姿がぼんやり浮かんだ。

ー今度こそはだかの王様じゃなく、正々堂々とした心底優しい王子様と出会いたい。

祈る気持ちでスマホを握った。




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