第4話 こんなメリットもある。

今日は午後のクリーンスタッフ、夏目ゆかりの誕生日。

彼女は午前中隣のビルで働いているので、こちらで合流してお昼ごはんを社員達と一緒に食べている。

明るくて優しくて気配り上手なゆかりは、みんなの人気者だ。

咲良さらも大好きな、憧れの大人の女性である。

サプライズで用意したのは、パブロのプレミアムチーズケーキ。

以前ここのケーキが好きだと言っていたので、前日大阪駅前で買っておいた。

ランチ仲間の6人で、ひとり250円づつ出し合って購入。

ささやかながらみんなでお祝い。


11時40分。

「こんにちわー」

隣のビルでの仕事を終え、いつも通りゆかりがかわいらしい笑顔で控室に入ってくる。

「ゆかりちゃん、ハッピーバースディ!」

「わお!どしたん!?ビックリしたー」

照れたようにはにかむ表情は少女のようで、とても50歳の大台に乗ったとは思えない。

咲良が現在この職場で気に入っているのは、こんな風に仲間たちとわきあいあいと過ごす時間だ。


清掃の仕事は、毎日同じことの繰り返しだ。

決められた場所を、定められた手順で、キレイにしていく。

一見何の変化もなく、面白味もない。

そんな単調な作業に楽しさというスパイスを加えてくれるのは、個性豊かな仲間たちとの語らいだ。

トイレや給湯など共用部は一人作業が多いが、テナント室内作業や大きな廃棄物の運搬などでは、チームワークや協力行動が必要となる。

効率よくいい仕事をするためには、日頃からのコミュニケーションや人間関係が大切なのだ。

社員は特にその重要性を熟知している。

仲間内での結束を固めておかないと、強力な手ごわいパートのオバちゃん達に足元をすくわれてしまうからだ。

何十年も清掃一筋の定年間際の大ベテランさん達は、自分達のほうが社員より上と思っていたりする。

なのであれやこれや口出ししたり、影で文句を言ってたりする。

まるでシンデレラの物語に登場する意地悪な継母とその娘たちのよう、咲良はそう感じている。

もちろん、人手不足の清掃業界だけに、長く働いてくださるのはありがたい。

今や出世してマネージャーとなった元主任の真行寺共々、ここNビルの社員達はパートさん達を大切にしている。

けれどその思いとは裏腹に、攻撃されることも多々ある。

詳しい内容はいずれ、また…。

けれどそんな逆風にも負けず、多少の問題は笑い飛ばし、話のネタにしてしまう。

強くたくましく先輩方を見ていると、咲良も勇気付けられるのであった。

清掃職に流れついた人達は、人生のどん底を経験している人が多くいる。

失業、離婚、借金、病気、親の不貞…。

けれどそれらをバネにする強さを持っています。

だって歯を食いしばって這うようにしてでも生きてきたのだから。

そして今ギリギリの状態でも、笑って過ごしているのだから。

これからも何があっても、やっていける。

そう思えるのです。

年齢的に他に行くところがない人でも、どんどんウエルカム。

この仕事の一番の利点はそこ。体が動くなら、70過ぎても働ける。

これから益々、年金もアテにはできないからね。

自分の食い扶持くらいは何とかしないと。

清掃は体力勝負。

よく動くので毎日お腹が減るんです。

早寝早起き、三度の食事がおいしいなんて、まさに生きている喜びを日々実感しているようなもの。

健康でいたい人には、もってこいの仕事ですよ。











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