第3話 貧困との戦い

「お腹空いた……」

給料日前、財布の中には小銭しかない。

「おいしいお肉食べたいな…」

仕事帰り夕方のスーパー。試食が出てないか惣菜コーナーとパン売り場を物色する。

「最近試食ある日も少なくなったなぁ。スーパーも経費削減してるのかな」

ため息まじりについぼやいてしまう。空腹はイライラのもとだ。

赤身が並ぶ精肉コーナーを横目に、向かうは野菜コーナー。

給料日前のお助け食材、もやしをかごにいれる。

その他値引きシールが貼られた鮭の切り身と、安い豆腐。

合計220円。

これが、今晩の食事だ。


咲良さらの住まいは天王寺区の1Kマンション。駅から徒歩6分。JR環状線や地下鉄もすぐ近くで、アクセスはかなり便利。

家賃は共益費水道代込で5万円。

一般的に清掃従事者の所得は低い。

咲良の手取り月収も平均して12万程度。

食費、生活費、保険代、光熱費、特に女子としては化粧品やヘアケアなど必要最低限の身だしなみにも出費がかさむので、生活はギリギリだ。

とてもじゃないが貯金などままならない。

もちろん時には歓送迎会など社会人としてのつきあいの会費もいるし、女子会やたまには友達とも遊びたい。

押さえるとなると、やはり食費。

基本自炊とお弁当。

職場にスタバがあるが、あのエリアは聖域に感じるのだ。

フラペチーノなど特別な日しか食べれない代物と思っている。


「いただきまーす」

一人用の土鍋に、半額で購入した鮭ともやしと豆腐を入れる。

冷蔵庫に残っていたネギをちらして、唐辛子をかけポン酢でいただく。

「うーん、おいしい。200円やそこらでこんなうまい料理作れる私って天才!」

鍋でゆでてるだけですがwww

一日中動きまわってシンデレラは腹ペコなのです。

「空きっ腹にしみるわー。今日も温かい食事がいただけて幸せです」

自画自賛して感謝の気持ちでいただくことで、どんな質素な料理でもおいしく感じることを学んだのでした。

夜は炭水化物を抜くことで、お財布に優しくカラダもダイエット。

一石二鳥のグッドアイデアだ。


清掃は女性が多く活躍している仕事だ。

技術を身につけた優秀なスタッフが長く続けてくれるためには、女性が自立できる体制が必要だと私は思う。

そのためにもやはり、基本給をもっと上げてほしい。

例えこの仕事が好きでこの会社が好きでずっと働きたくても、生活の安定のために他の職種他の会社に変わった人を何人も見てきたからだ。

特にシングルマザーで子育てしていたり、親の介護でお金が必要になったりすると、所得の問題はより深刻になる。

何も贅沢を望んでいるわけではない。

ただ人として最低限の保証を、せめて必要な時に病院に行けるくらいはしたい。

うちの会社の中には、給料日前はお金がなくて歯医者も行けないし、腰痛くても整形受診もできない、という人もいる。

清掃は肉体労働だから、ひざとか腰とか肩とか、けっこう身体を痛める。

年配の方が多いから、なおさらね。

けど生活がギリギリだから、病院にも行かず我慢してる人は多い。


なぜ清掃だけこんなに条件が悪いのか?

うちはビル管理全般を請け負っているので、警備職、設備職、総合職といる。

みんな月給制だが、清掃の女子社員だけは日給制。なので祝日が多い月は給料も大幅ダウン。

総合職は私達の倍くらい給料をもらっている。

清掃職がいなければこの会社組織だって成り立たないし、女性ならではの細やかな気配りで笑顔でテナントの方々にも接している。

私達が会社を、社会を影ながら支えている!

そう自負しています。


現状を知ってほしくて、以前いた現場で総合職の上司に相談したことがある。

帰ってきた言葉は

「給与が不満ならやめてくれとしか会社は言えないよね」

あぁ、この人はひとの気持ちとか痛みがわからないんだなって思った。

自分は恵まれた環境にいるからね。

求人広告には『女性が活躍している職場です』とうたわれていながら、

女性の待遇は良いとは言えない。

男性ばかりが優遇されている。

重役達も男しかいない。

本社研修でのフリートーク時、これはチャンスと私は社長の前で声高らかに

「社員のモチベーションを上げ能力ある人材を定着させるために給料を上げてください!そしてもっと女性が活躍できるように自立支援をする社会貢献的役割を担った、人に優しい企業になってほしい!」

そう言ったら、左遷されて今の現場に異動となった(苦笑)

実はそんな過去がある、すねに傷持つ身だったりする。

時には組織にも立ち向かう、誇り高きシンデレラで私はいたい。

入社6年目。ワーキングプアと呼ばれる年収200万以下で暮らしてはいるけれども、

おいしく食事が食べれて、温かいお風呂につかって、ぐっすり眠れて。

そんな日常のささいな喜びに感謝できる心は私の宝物です。





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