灰色の死闘③





「――――――っ!?」





気がつけば、俺は『なにか』に守られていた。


瞼を開ける。


どうやら俺は……





「……無事、なのか」



破壊の光線。


確かにあれを食らったはず……



ただでは決してすまない攻撃。


しかし。



実際に俺は――傷一つ、ついちゃいなかった。




「……なんだ、これ」




それは俺のピンチに呼応するかのように現れていた。



目の前にあるのは、俺の身体程ある――白き十字架を模った、『盾』。



気が遠くなる程の莫大な魔力が込められ、白く輝き続けるそれは、俺に迫る攻撃にもビクともしない。





「樹、か」





これは、俺の魔力じゃない。


ずっと近くに居た、その魔力。


樹の魔力だ。




「――これは」




身体を見て、俺は『それ』に気付く。



暖かい、優しい魔力が現れ、消えていく。その源は、俺の左腕からだった。


『ブレスレット』。それに刻み込まれた十字架が眩く輝く。


宝石のような美しさに見惚れそうになる、が、意識を戻す。



……そうか、あの時か。






「はは、あれだけ格好つけたってのにな」





改めて樹の凄さを実感する。



だが……恐らく長くは持たない、一回限りの防御魔法。



樹がくれた、最後の機会チャンス






――――《「藍、君。ありがとう。僕と一緒に居てくれて」》――――



今も輝くブレスレット。


目を瞑れば、これを貰った、あの時の光景が思い出せる。




「はは」



静かに笑う。





樹には……本当に敵わないな。



光り輝き、俺を守ってくれたブレスレットを握り締め。



俺は、前を向く。



――『決めて』って、遠くの樹が伝えているような、そんな気がした。





俺は――それに、応えるだけだ!





「終わらせるよ」





最後のチャンスだ。



今が、アイツを壊す、絶好の機会。







「――『増幅』――」




俺は、最後の増幅を身体に響き渡す。



滾る魔力。



俺は、背中に刺したスタッフを手に取る。





「今まで放置して、悪かったな」





アルスに斬られ、二つになった時から一緒に戦ってきた大事な武器。


二つの内、柄の方は剣として……ずっと戦闘に貢献してきた。


しかしもう一つ、剣身は刃がなく『鈍器』であり――魔力を節約する戦闘の際のみ使用し、戦闘力で言えば完全に剣の方が上だ。




だからこそ、使っていてずっと違和感があった。


俺は、コイツをこんな使い方しかできないのかと。



常識に、形に囚われるんじゃない。コイツは、俺の『モノ』なのだから――



――今の俺なら、それが出来る!




「……『創造』――」




唱えながら、イメージを。






――それは、全てを射抜くモノ。


――それは、あらゆる攻撃を突き抜けるモノ。




「『変形』」





同時に――


俺の手に握られたスタッフが――形を変えていく。



不思議な感覚だ、あれだけ硬かったスタッフが、俺のイメージ通りに形を変えていった。




只の棒状のそれは、一方の先端を鋭く尖らせて。


やがて『斬る』、よりも『突く』刃を先端に形作り、それを支えるように、長い柄も作られていく。





「っ、最後だ――」





――仕上げといこうか。



そろそろ俺も、限界だしな。



俺は――身体に宿る炎と雷を、コイツへ託す。






「――――『雷炎槍』!!」




最後の詠唱で、俺の全ての炎と雷が移っていき――『槍』は完成した。



長い柄には雷が帯電。



穂先には炎の刃が燃え盛っている。



炎と雷――共に輝く翡翠の槍。



二つの属性が生きている、俺の最高傑作だ。






――これで、アイツを止めて見せる!




「GAAAAAAAAAAA!!!」





攻撃を終え、俺を発見すると共にけたたましい叫びを上げた化け物。


自分の攻撃が通らなかった事に怒っているのだろうか。




そして同時に、またあの攻撃の予備動作に入る。


――俺に。次はない。




だが――


逃げるなんて考えは起こらない。



ここで、決める!




「行くぞ」



俺は走った。



そして。




「―――――――――!!!!!」






ブレスが襲い掛かる。




正真正銘、この攻撃で、これで終わり。




この一槍に――――全てを託す!





「届――け――――っ!!」





それは、全身全霊を込めて。


俺は――化け物の頭へと槍を投擲した。

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