『機械の町』、探索


最大限に警戒しながら、俺達は歩いていく。




「……本当に、どうなってんだここは」



その中は、何もかもこの世界に似つかないものだった。


ファンタジーとは到底言えない、金属が支配する場所。


外観から見て想像は出来ていたが、実際に見れば見るほど、自分の頭がおかしくなりそうだ。




「……っ!こっちだ樹」



気配を察知する為、張り巡らせた俺の電気が敵を教える。


隠れられそうな、機械の影に移動し様子を伺う。




「――――――」




現れたのは、またしても人型の機械。化け物というよりかは、この町の兵のような。


先ほどの門番程の大きさでなく、俺達より一回り大きい程度の身長。


人間に近く作られたその金属の造形は、凄く不気味で……強さが計り知れない。



「――――――」



そしてまた逆の方向から現れた、二人目の機械兵。


少し造形が違うソイツは、一人目と遭遇しても何の反応も無く通り過ぎる。



「……」



息を潜める俺達。


この機械の町は、恐らく俺達が歩んできた場所と比にならない程の強さの化け物が存在している。


戦闘になれば――考えたくない。



「……ふう」



やっと過ぎた機械兵を確認し、息を付く。


俺の思っていた以上にここは危険な場所らしい。



心臓の鼓動が落ち着くのを待ってから、俺は考える。



「樹。行けるか?」



そう俺は樹に問う。



「……」


頷く樹。


樹は強くなった、この世界に連れて来られた時など非にならぬ程。


それでもこんな未知の場所。樹の不安と恐怖の感情は、長く一緒に居たからこそ分かる。





「俺がついてる、大丈夫だ」



そう、緊張を解すように言う。


樹は強い……だが女の子だ。俺が引っ張って行かないと。



「……うん」


静かな笑顔、少しは不安も薄れてくれたかな。



「行こう」



まだまだこの場所の再序盤。


この世界に気付かれないように、静かに歩いていく。





ーーーーーーーーーーーーーーー




最初、この場所を発見した時。


一番目を引いた中央の大きな塔。見るからに最重要施設と言わんばかりのその場所。


俺達の目標はそこだ。




「……こんな場所もあるのか」



歩いて行く内に、俺達は様々な場所を見る事が出来た。


遠くから見ていてはいたものの、やはりその地を歩けば新たな発見もある。



工場のような場所を抜けたと思えば、辺り一面に家のような建造物が並ぶ場所があったり。


ライオンやウマなど動物の形をした、動かない灰色の像があったり。


公園のような場所もあり……俺達が最初に抱いていた想像よりも、人が作った場所という感覚があった。



しかし、一つ確実に言えるのは『人がいない』という事。


家があっても、像があっても、公園があっても……そこには誰もいない。


無人。そこには機械しか居ない。



心なしか、『寂しい』という感覚を感じた。



「本当に、不思議な場所だ」



――――――――――――



あの塔に近付く程に、深部に進んでいくたびに、魔力が濃くなっていくのを感じる。


この灰色の地に転移してから、明らかに魔力が濃くなっているとは思っていたが、今はもっとだ。



やはり、あの塔に何かが必ずある。


開けた場所も多くなってきた、気を付けないと。


兵士達はあまり見なくなってきたが……




「……見えてきたな」




やがて俺の目標である、『塔』が見えてくる。



近くで見るとその大きさは良く分かった。



一体何の為に?誰が創ったのか?



分からない。


が――この建物は、この場所に、ここの兵隊達全てに守られている――そんな気がした。



だからこそ――これまで以上に警戒しなくてはならない。







「……!」



警戒しながら歩いていると、樹が急に手を引いて物陰に俺を誘い込む。



「いっ樹?どうし――」


「……何、か、分からないけど、来る……!」




俺には、その『感覚』が分からなかった。


しかし樹の表情と言葉から、ただならないモノが近付いて来ている事は分かる。




――――――――




そして。




「……なんだよ、あれ……」




『それ』は、見えた。





一つ――その巨大な輪郭と、地面を走らせる『キャタピラ』。


二つ――それを覆う、途轍もなく重厚な装甲と青い光。


三つ――そこから伸びる、凶悪な砲塔。その付近にも小型の砲台が存在している。




これは――戦車だ。



「……」


「……!」




俺達は、物陰に身を潜める。




「―――――」



なんとか息を殺す。


やがて、その機械の戦車が俺達の横を通り過ぎ――



――その砲先は、俺達に向いた。


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