夕の遭遇①

そこは、言うことない普通の森林。日は遮られ、異世界の樹木が立ち並ぶ。


しかし前と違うのが……


「っ!いきなりかよ」


ミニゴブリンの出迎え。


まさかこんな早く襲われるとは思わなかった。


数は三匹。図鑑通りの大きさで、知能もあまりなさそうだな。


突っ込んできたミニゴブリンをスタッフで殴ると、それだけで大人しくなってしまった。


後の二匹も同様。正直かなり弱いんじゃないか……?


ノーマルゴブリンみたいに連携も取らないし、こりゃ初心者向けのモンスターって感じです。


「……」


そして樹は辺りの草花に屈み、一束掴んで俺に持ってくる。


「お、ケラー草か。ありがとう、これだけでもう三本はあるな」


探すの早いなー樹……とりあえず見つけてくれたケラー草を袋にいれておく。


そして俺に渡した後、奥へ進みまたケラー草を探してくれているようだ。


次々と見つけてくれるが何か探すコツでもあるんだろうか?


俺はさっきから探してるが、なかなか見つからない。こういうの苦手なのか俺。


「……」


っと、また持ってきてくれたのか……って多いな!軽く十はあるぞ。


「すごいな樹、採集依頼に関しては誰にも負けないって」


「……」


少し頬を染めた後、また駆け出して向こうへ行く樹。


本当に樹には助けられてばっかりである。申し訳ないぐらい。


俺はそうだな……樹の周辺の見張りでもしておこうか。


いくら弱いと言えども油断はしない。って言ってるそばから出てきたな。


数は十匹。って纏めて突っ込んでくるのかよ!


――――――――


……うん、ここまで連携しないとは思わなかった。弱すぎだ。


突っ込んでくるのをスタッフではたき落とすだけで終わってしまうとはね……


正直な所Fランクなだけあって、依頼の報酬金も少なめだと思っていたがそれに比例して難易度もちゃんと下がるようである。


まあ、それでも油断はしないけどね。


次は倍の二十でも来るかもしれないしな、うん。……ないか。


「……」


そんな事を考えていると、樹が戻ってくる。


ちょっと遅かったな。流石に少しは手間取って……え?


「……これ、樹一人で?」


俺に手渡されたのは、二十近いケラー草の束。


こっちが二倍来るのかよ!


「……」


渡した後、そのまま立ったまま居る樹。


何かをせがまれているような感覚。もしかして。


「いやー本当に凄いな樹は。はは、ありがとうな」


我ながら下手くそな褒め方だが……


「……」


頬を染めて嬉しそうな樹を見ると、良いのかなと思ってしまう。


こういうとこ可愛いんだよなーってだめだ、依頼に集中しないと。


……うん、もう一頑張りしたら昼にしようか。

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