初依頼
「……朝か……」
どうやら例の食事の鐘の音で目を覚ましたらしい。
隣を見るともう樹は起きて、洗面所にいるみたいだ。
ちゃっちゃと俺も準備するとしよう。服は……いつもの貰った服でもいいんだけど。
なんとなく、元の世界の服を着るってのもいい。というわけで制服で。
着てみて余りにも動きにくかったら、着替えればいい話だしな。
えっと確かバックの奥の方に……
……っと樹が出てきたか。俺も顔洗って着替えて、さっさとご飯食べに行こう。
――――――――――――――――
時は過ぎて、ご飯を食べ終わって部屋に戻った所だ。
今は身支度を済ませている。
ちなみに、朝ご飯はパンで様々な具材を挟んだ……うん、サンドウィッチだった。
こっちではサンドウィッチ伯爵なんて居ないだろうし、名前はなんていうのか知らないが。
「さて、準備できたか?」
「……」
頷く樹。まあ荷物は殆どこの部屋に置いていくんだけど。
樹はロッドと鞄だけ。服装はいつも通りの支給されていた服だ。
俺はスタッフとライターと鞄。
鞄はポーションとか以外は出来るだけ明けておいた。何か入れるかもしれないからな。
「よし、昨日も話したけど、今日はギルドに行って依頼を受けるぞ。んじゃ出発!」
俺達は、初依頼を受けるためコルナダにあるギルドへ向かったのだった。
――――――――――――――――
門番さんが言っていたように、この宿を出てすぐそこにあったようで。
「ここか……なんか王都の時よりちょっと大きめだな。」
目の前は王都より一回り大きいギルドらしき建物。
ちなみに門番さんによるとギルドといっても一杯あって商業ギルドや他の職業専門のギルドもある。
うむ……ファンタジーだ。
そんなギルドの中で俺達がお世話になるのがこの『冒険者ギルド』ってわけ。
中に入ると冒険者達が大量にカウンターに並び、また酒場らしき場所もあり、そこではパーティーを組んでいる人、待っている人らしき人がいる。
ここまで人、人、人となると圧巻だ。それも冒険者となると。
案の定と言えばそうだが、提示板にはこれはまた大量の人がいる。
うーむ、あの中に突っ込んでいくのはちょっとキツい。それにしても、あの馬鹿でかい板をみると仕事がないなんてことはないよな。
近づいてみると分かるが、ランクによって依頼の張られている場所が違っているようだった。
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受注可能ランク F~
依頼内容 最近繁殖がより活発になったため、サレニデ森林のミニゴブリン討伐を行って貰いたい。一匹につき十アゼル。
依頼主 コルナダ警備隊長
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これとかどうだろう、またゴブリンって感じだけど。
あとは……お、採取系のものもあるのか。
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受注可能ランク F~
依頼内容 回復薬作成の為の薬草採取を行って欲しい。場所は問わないが、薬草はケラー草を指定する。十本で五十アゼル。
依頼主 錬金術ギルド
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うーん、ケラー草ってのがまず分からないんだけど……
依頼を持っていけば教えてくれるんだろうか?
そういや前倒したのもゴブリンって勝手に思ってたがもしかしたら違う生物なのかもしれない。
あー、考えたらこんがらがってきた。
とりあえずこの依頼を、依頼受諾用カウンターまで持っていくことにしよう。
うーむ、一杯並んでるな……
――――――――――
「ふう、本当に人が多いな」
とりあえずカウンターの手前までこれた。
案外進むのが早くて助かったなー、もうすぐ俺の番だ。
カウンターには若い女性。この人の手際が良いからこその早さだろう。
「ギルドカード、見せてもらっていいでしょうか?」
気付くと俺の番だった。慌てて俺はギルドカードを出す。
「すいません。これです」
「……なるほど、ユウスケさん。Fランクで、まだ依頼を受けた事が無いんですね。それならここも初めてでしょう。受付のスローネと申します。どの依頼を受けるかもう決まってますか?」
おお、初めて年齢の事言われ無かったぞ。スローネさんいい人。
「えーっと、ミニゴブリン討伐とケラー草の採取依頼を受けようかと」
「なるほど、お節介かもしれないですが。その装備で言っていた依頼を?」
言われてみればその通りだ。でも正直、防具は無くてもゴブリン程度なら戦えたし大丈夫だろう。
「はい、一応ここまで来るまでにゴブリン?っぽいのとは戦えましたから、いけそうかなと思って」
俺がそう言うと、少し考える顔をするスローネさん。
「……えー、もしかしてスロベー森林を抜けてここへ?」
「はい、そうですね」
「やっぱり。あの森林を抜けてこれたのであれば安心して任せられますね。貴方の言うゴブリンというのは、おそらくノーマルゴブリンです。ミニゴブリンより二回り大きく、その分強いです。討伐依頼としてはEからDランクに相当するかと」
なるほど……意外と強かったのかあれ。
「それじゃこの依頼は受けられるんですね。採取の方は大丈夫ですか?」
「もちろん、それでは……この袋と、この袋にそれぞれミニゴブリンの討伐証明部位、ケラー草をお願いします。えっと……ミニゴブリンはこの図鑑に、ケラー草はこの図鑑に載ってるので」
スローネさんはカウンターの下から二冊の本を出し、渡してくれた。
討伐証明部位ってのはまあ、そのままの意味だろう。
おう、重い。
「ありがとうございます」
「いえいえ。それじゃ……初めてで大変かもしれませんが頑張って下さいね。本は横の返却口に置いて貰えばいいので」
「は、はい!それじゃ」
笑顔でそう言ってくれるスローネさん。
……不覚にもドキッとした。真面目そうな人だからその分、笑顔の破壊力が上増しだな。
そんな俺に、服をジト目で引っ張ってくる樹。
ごめんって!
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