第五章 その三

「さて、舞は和樹くんとお買い物に行っちゃったからお洗濯でもしましょうかね。」


 そう一人で呟いてから、ランドリールームに向かう。古い屋敷とは言え、さすが豪邸。ランドリールームがあるようだ。


「あいまーま。これ。」


 そう言ってさっきまで妹の舞と一緒に居た女の子がパタパタと走ってきた。その手には見たことのない財布がある。


「あらあら、唯、どこで見つけたの?」


 そう言って少女の目線までしゃがみ込んで頭を撫でる。満足げな表情を浮かべながら少女が拾った場所の説明を始める。


「あのね、ゆいね。ひろったの。げんかんっ。」


「そう。お利口さんね。じゃ、ママにそれを頂戴?」


 そう言って少女から財布を受け取ろうとする。


「はいこれ。あいまーま。」


 少女はそう言って素直に拾った財布を手渡す。


「ありがとう。唯は本当にお利口さんね。」


 そう言って再び少女の頭を撫でる。


「うん、ゆい、おりこう。まいまーまもそういってた。」


「そう。舞ママもそう言ってたの?」


「うんっ。」


 少女は嬉しそうに胸を張って答える。


「じゃ、一緒にお洗濯もしましょうか。」


「うん、おせんたくするー。」


 少女は飛び跳ねるように走っていった。


「本当に元気なんだから・・・」


 そう言って少女、唯を見る姿は真に母親のように見えた。


「あ、このお財布は和樹くんのよね。玄関に落とすなんて・・・」


 そう言って呆れたような笑顔を浮かべる。


 パサッ


 財布から何かが落ちる。それは感熱紙に印刷されたコンビニのレシートだ。


「あら?何かしら・・・紙?それにしても見たことのないような紙ね・・・」


 そう言いながら拾った紙を財布に戻す。その時、悪気はなかったのだろうが思わず財布の中を見てしまった。


「これって・・・免許証?写真は・・・和樹くんよね・・・でも、有効期限が平成?平成ってなにかしら・・・」


 思わずよからぬことが頭をよぎる。


「免許証にしてはサイズも小さいし、少し厚手よね・・・。偽造にしても・・・質が悪いわ。」


 フンッと鼻を鳴らしてさっき拾ったレシートを財布にしまい込んだ。


「まぁ、どちらにしてもここに置いておくわけにはいかないから、部屋にでも置いておきましょうかね。」


 まるで誰かに話しかけるように独り言を言い、二階へ向かった。

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