第四章 その三
教師になって一年。私は、まだ、舞に出会えていない。
一年に一度はあの町の社に行く。その約束は絶対に
それは私の生きる目的だった。
それだけが私の目的だったはず。
「舞に再会する。」
これが私の人生の目的であり、なけなしの貯蓄をはたいて行ってきたことだ。
仕事の合間に図書館へ行き舞に関わりのありそうな記事を集め、興信所を訪ね舞の捜索や手がかりをつかむように依頼する。そして、時間が取れた時は成和町の社を訪ねる。この繰り返しだった。
しかし、日に日に必要な資金が必要となり、できることが減っていく。
お金が欲しかった。
舞に会うために。
自分の目的のために。
いつしか私は教師という立場を手放した。
私は何が目的だったのかわからなくなってきていた。
気が付くと舞を感じられない自分がいたことに気が付いて愕然とした。
それまでは、いつもとは言わないが舞を身近に感じることができた。それは自分の意思とは関係なく、彼女の、おそらく舞だと思われる誰かの感情の一部が流れ込んでくるからだった。それがある日を境に全く感じられなくなった。私は生きる目的を失いつつあった。
教師という道は、自分で選んだ道だった。私たち姉妹が歩んでくるはずだった子供時代。突然の別れによって失った自らの半身と、ともに歩むはずだった日々。その日々が戻らないことや恨んでも仕方がないことはわかっていた。
だから、今を生きる子供たちに生きることの幸せを伝えたい。それが動機だったのに・・・いつの間にか私の生きる目的は全て無くなってしまったように思った。
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