まかせるのだ!アライさん
今井三太郎
ジャパリまんじゅうこわい
ロビーに集まった面々は食い入るようにタイリクオオカミの話に耳を
ロッジアリツカでは見慣れた光景だが、その日はいつもより少しばかり
「まんまとまんじゅうをせしめた若者はこう言ったのさ、今度は熱いお茶が怖いってね」
「なるほど!
「すごいのだ! かしこいのだ!」
鼻息を荒げるアミメキリンと肩を並べ、目を
「“まんじゅうこわい”ってお話なんだけど……これもある意味、怖い話ってことになるのかな? ふふ、また図書館でいろいろ仕入れてくるとしよう」
「ふーん。なるほどー、おもしろい話だねー」
端の席で大きな耳を傾けていたフェネックは、「ぬふふ」と不敵な笑みを浮かべるアライさんを横目に、静かにまぶたを
タイリクオオカミの
「皆さーん、お昼ご飯お待たせしましたー。ロッジアリツカ名物……というわけではありませんが、ジャパリまんですよー」
ぐうう、と、アライさんのお腹の虫がかわいらしい鳴き声をあげた。
このところずっと帽子泥棒を追いかけていたこともあり、少しばかり食いっぱぐれ気味なのだ。
だが多少頭に栄養が行っていないからといって、その明後日の方向への行動力にかげりが出るようなアライさんではない。
「かしこいアライさんはいいことを思いついたのだ!」
アライさんは口の端をニッと吊り上げると、相方のフェネックに向かってグッと親指を立てた。
当の相方はというと、特に驚いたり期待するような
「アライさーん、だいたい想像はつくけど、ほんとに上手くいくかなー?」
「心配しなくても大丈夫なのだフェネック! アライさんにおまかせなのだ!」
いったいどこにそんな自信の
するとどうだろう、むおんむおんといかにも苦しそうに
「うあー、ジャパリまんなのだ! アライさんはジャパリまんが怖いのだー! ふかふかでもっちりしたあの食感とジューシーな中身の絶妙なハーモニーがおそろしいのだー! ああーっ!」
「そ、そうなんですか? じゃあ仕方ないですけど、これは片付けちゃいますね。けど困りましたねえ、お昼ごはんどうしましょう」
「あれ? あれれーーーっ!? 待ってほしいのだ! ジャパリまんが怖いのだ! 怖いのだーーーっ!」
“まんじゅうこわい”とは、まんじゅうを
その
「そんなにジャパリまんのことが怖かったなんて……! ごめんなさい、怖い思いをさせてしまって。ご安心ください、私が責任をもって処分します! パクッ、おいしー!」
「ああーっ! アライさんのジャパリまんがーーーっ!!!」
あわれ! アライさんのジャパリまんはアリツカゲラの小さなお口へと姿を消したのであった。
策士は策のプールでおぼれ、2ジャパリまんを追う者1ジャパリまんを
あとに残ったのはご飯をねだる腹の虫だけである。
「アライさーん、やってしまったねえ」
「むおおおおん……フェネックぅ……! フェネックぅぅ……!」
よよよぉーと泣き
「ほらー、アライさん、私のジャパリまん半分あげるから元気だしなよー」
「フェネ”ッグぅ……!! ありがどう”なのだあ……!!」
アライさんの小さな両手がフェネックの背中に回される。
半分に割られたジャパリまんからは、ホワホワと温かい湯気があがっていた。
「……涙の味がするのだ……!」
「そう? わたしはいつもより美味しく感じるけどなー」
半分のジャパリまんを
「ふふふ、やっぱりアライさんはかわいいなあー……」
ジャパリまんに夢中になっているアライさんが
「あの子やるねえ……、いいネタいただきました」
「なるほど、たしかにこわいですね、先生!」
まかせるのだ!アライさん 今井三太郎 @IMAIX
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