第6話犬

出っ歯に、薄暗い病院の中を案内された。


歩いているとざらざらした砂が足にこびりついてくる。


「十年前ぐらい前に閉鎖になったんや。」


十年経過していても原型は残っているがほとんど暗闇のトンネルの中を歩かされているような感覚だ。


「犬がいる。」


「そうや、みんないらなくなった犬を捨てて行くんや。」


犬達の群れは新参者の僕を見ても反応しない。

人間に愛される事を嫌うように…。


「食堂や。不思議と毎月、食料が配給される。」


真っ暗な食堂に何人かの男女が無言で食事を取っていた。


「腹ペコやろ?」


「いや、僕は物心が、ついた時から食欲を感じた事が無いんだ。」


「ガリガリな訳やな。」


出っ歯は、ベーコンを口の中に入れて言った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る