おまけ。山高帽でのご訪問

 一点を見つめておりますと、どうにも想いが激しく燃えていくように錯覚します。

 あの方から薦められた映画を観たところすっかりと感化されてしまいました。私の部屋は黒と白を基調にしたモダンなテイストで、女性マネキンの椅子やテーブルが並んでいます。そこに座り、ミルクを飲みながらあの方の住む方向をずっと見る事が日課となりました。しかしそれも今日まで……私は真っ白な衣装を身に付けステッキと例の物を持ち、山高帽被ってあの方の元へと向かったのです。





 部屋の前。チャイムを連打。


「申し訳ありません!  事故に遭ってしまったので電話を貸していただきたいのですが!」


 ドアが開きました。するとあの方が「何をやっているんだ」と言って私を部屋に入れたのでした。想定外です。ここで一悶着するようにわざわざ台詞を覚えたのですが、どうやら無駄骨となったようです。


 お邪魔しますとお部屋に招かれお茶を頂きました。玉露でした。美味しいです。しかしあの方はコーヒーを飲んでおられたので、次回に豆の一つも送りたく思います。


「貸した映画の真似事か?  楽しんでくれたのは嬉しいが、影響され過ぎであろう」


「突然の訪問申し訳ありません。しかしどうにも居ても立っても居られなくなり、本日はマルチックをインアウトしてフィリーしたいアルトラ衝動に駆られましたので、貴方様宅にサプライズ訪問させて頂いた次第でございます。それでは、ホラーショーなグブリ話をビディー差し上げますわ!  マレンキーな常識ドゥーグをかなぐり捨てて、いざトルチョーク!  ライティライト!?」


 私は呆気に取られたあの方を縛り上げ雨に唄えばを口ずさみました。そしてがら空きになったガディワッツにキック!  やってしまいました!  間違えてしまいました!


「申し訳ありません!  フィリーするのでしたね!  危うく貴方様を半身不随にするところでした!」


 私はそう言ってあの方のズボンをハサミで切り、ボルシーなヤーブルを露出させました。顔が赤くなっていくのが自分でもわかります。何やらスマートフォンが鳴っているようですが無視します。関係ありません。


「……強姦したら死んでしまうではないか」


「それはそうでした。では、お戯れはここまでです」


 横たわるあの方に、私は例の物を差し出しました。


「お誕生日、おめでとうございます。貴方様」


 そう。今日はあの方の誕生日だったのです。それは私にとっても特別な日……少し過激となってしまいましたが、お互い忘れられぬ思い出になった事でしょう。

 あぁよかった。これでまた幸せな家庭に近付いた。そんな事を思っていると、玄関が開きこちらに向かってくる足音が聞こえました。


「貴方。母が誕生日を祝ってさしあげようと連絡したのにも関わらず電話に出ないとはなにごと……」


 突然の乱入者は静かに去って行きました。


「あの」


「なんだ」


「ズボン、弁償させて頂きますね?」


「……あぁ、そうしてくれ」

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