恐怖! ミイラ男(叶 良辰)

「王子、俺ちょっと気がついちゃったんですけど」


 わびすけが唐突に言った。


「俺らって、それぞれ役割有りますけど、間を取り持つ役がいないと思うんです」

「ウエイターとかウエイトレスってことか? フラとシルフいるじゃん」


「王子はあの二人が接客に向いているとお思いで?」

「サトリもいるじゃん?」


「確かに理解力はありますけど、伝えるのは下手ですよね? ってかはっきり言ってコミュ障」

「キュウは論外だしな」


「まあ、私が尻拭いをしているわけですが」

「お前は肝心な時にやらかすから信用してない」


「それは言わないでよ……」

「で、なんだ? 新しく誰か入れたいのか?」


「はい。で、その場合、もう少しお店の業務を安定させられる奴を召喚したほうが良いと思うのです。いろいろできる……」

「ふーん……」


 少し考え、実はまだ召喚枠を使いきってないことを思い出した。


「わびすけ、どんなキャラがいいか、他の奴らの希望を聞いて来てくれるか?」

「わかりました」



――1時間後


「王子、聞いてきました」

「おお、どうだった?」


「キュウさんは『醜い』奴がいいって言ってました」

「は? なんで?」


「これ以上ライバルを増やしたくないからだそうです」

「あいつ本当に自己中だな! 他は?」


「むっちゃんさんは、メッセンジャーボーイっぽいのが欲しいそうです」

「その気持ちはわからんでもないな。これ以上勝手なことされちゃかなわんしな」


「サトリンは何でも言うことを聞いてくれる奴が希望とのことで……」

「みんな下僕が欲しいのかよ。で、お前は?」


「俺はマルチな奴が欲しいっす! できるだけ俺らを楽させてもらえるような……」

「お前いっつもチワワってんじゃねーか! 生活に疲れたようなこと言ってんじゃねーよ!」


「あ、ひでー! これでもハードボイルドで売ってるんですから! で、王子はどんな奴がいいんですか?」


「俺か? うーん……マカロニグラタンが作れる奴がいいな」

「えらい具体的ですね」


「他の奴からは聞いてこなかったのか?」

「ふんもおに聞いたってしょーがないっしょ」


「それもそうだな。フラとかシルフとかも意見聞くだけ無駄な気もするしな。じゃあこれで申請出しとく」

「お願いしますっ!」



――その夜


「えーっと、このWEBサイトで召喚条件を入れて、と……。あれ? エラーが出るな。なんだ?」



――調べること小一時間



「は? 英語で入れろだと? ふざけんな! なんだこのクソシステムは! 俺ら外資系だったのか?」



――切れること5分



「ああ、キュウが使ってアップデートしてたのか! 俺の知らないうちに勝手なことしやがって……」



――キュウに連絡……する前に



(俺が英語使えない、とか思われるのはしゃくだな……テキトーにやっとくか)


 マカロニグラタン   ⇒ macaroni gratin

 醜い         ⇒ ugly

 メッセンジャーボーイ ⇒ messanger boy

 マルチ        ⇒ multi

 言うことを聞く    ⇒ yes man


「これでいいか」



――翌日



「私は幽鬼 ミイラ男 今後ともよろしく……」


「「「「誰だよこいつーっ!」」」」


「いえ、昨日コード入力で召喚されたのですが?」


「王子が? 王子って英語できたっけか?」


「そりゃ英語ぐらいできるわ!」


「いえ、全然駄目でした。おそらく召喚の段取り、わかってらっしゃらないかと」


「「「だよねー」」」


 orz


「じゃあなんで君が来たの?」


「M・U・M・M・Y ってあったので、てっきり私かと……」


「なにそれ?」

「私も自分を呼び出すための暗号かな、と思いまして」


「え? じゃあ君醜いの?」

「どちらかといえばイケメンって言われます」


「あーもう、全然ダメ!」

「なんでだよ!」


「じゃあさ、パシリとかできる感じ?」

「できるわけないっしょ! 私をなんだと思ってるんですか! パシッたら包帯ぬげるっしょ!」


「じゃあマルチな感じ?」

「カラオケの十八番は『アマン』です」


「「「知らんわそんなん!」」」


「とりあえず僕の言うこと聞いてくれるのかな? あ、聞いてくれないんだね。そうなんだ……」


「なに勝手にお一人で納得されてるんですか? まあ、そうなんですけどね」


「「「というわけで王子、こいつ、返品で!」」」


「ちょ! 呼び出しといていきなり返品って、ひどくね?」


「うーん。とりあえず、君はマカロニグラタンは作れるのかな?」


「あ、料理は大好きです。得意」


「はい、採用決定!」


「「「なんでですかーっ!」」」


これが奴、ミイラ男のミィがこの店に採用された長い経緯。

え? 怖くない? それは奴の真の能力をご存じないからですよ。

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