第10話
ジェットコースターが苦手だったのか、グロッキー状態の悠くんに構わず、隼人くんはけたけたと笑いながらティーカップを回している。男の子って、私たちとはやっぱりどこか違う。過度な遠慮をせずに、それでも適切な距離を保ちながら付かず離れず、健康的な友情を育んでいるように見える。隼人くんが悠くんにそうするように、ゆりかの肩に手を回したりちょっとした間違いをからかったりすることが、私には一生できないような気がして切なくなった。
悠くんと隼人くんがティーカップ型の乗り物で遊んでいる間、私とゆりかはメリーゴーランドの列に並んでいた。回転率が早いのか、順番はすぐに回ってきた。ゆりかはピンク色の木馬を、私はその横にあった水色の木馬を選んで跨ると、何処かで聞いたことのあるような甘いメロディが上部のスピーカーから流れ始めた。
張り巡らされたランプが点滅する中、メリーゴーランドはゆっくりと回転する。私は景色を見ることも忘れて、ゆりかの横顔に目線を遣った。今日のゆりかは特別きれい。頭の後ろで複雑に編まれた髪の毛の端を結ぶピンク色のリボンが、ゆりかの可愛さをひきたてている。
見慣れないメイクやいつもより大人っぽい服装が私に向けられたものでないことは分かっていたけれど。私の視線に気づいたゆりかがきょとんとしてこちらを見たので、曖昧に笑ってみせる。
「ねえ、きえちゃん。ゆりかね、きえちゃんと隼人くんっていい感じだと思うんだ。隼人くんって、明るくて元気な感じでしょう。きっときえちゃんは隼人くんと一緒にいれば、楽しく過ごせると思って…」
ゆりかの無言の牽制を呑み込んで、「そうだね、私も隼人くんのこと、少しいいなと思ってた」と心にも無い言葉を吐き捨てるように口にした。ぱっと顔を輝かせたゆりかに微笑むと、ゆりかはやっと安心したような表情を浮かべた。
ティーカップから降りてきた悠くんと隼人くんがこちらに手を振っていた。指差して、ゆりかの目線をあっちに向けてやる。ぐるぐると回るメリーゴーランドから見える景色は何だかゆがんでいた。私のゆりかに対する気持ちみたいに。
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