1-10:ミライ2

時刻は夜。今日のミライには色々あった。色々と考えて深夜まで起きていたが、そろそろ眠気が限界だ。

(もうダメだ寝よう)

ミライが寝ると、すぐに夢を見た。


「ここは公園……」

あの時の公園だ。近所にある公園であり、自分の魔力と戦った場所。つまり、魔力も、目の前にいた。


魔力はライチと同じ形をしてるが、昼に戦ったときとは雰囲気が違った。

「思い出して……私の事を……」

魔力の声は、昨日の夢の声だった。つまり、リッカの声だ。

「思い……出す……?」


「そう、思い出して。私は、あなたと会ったことがあるの」

「会ったこと……でも、顔もわからないのに、どうやって?」

「私の魔力を使って……『記憶』を思い出して……」


「記憶……!」

ミライは手にカードを持っていることに気がついた。橙色のカードが、ぼんやりと光り輝いている。

(魔力との対話、魔法の特訓……)

ライチの言葉を思い出し、呪文を唱える。


「”遠く忘却から、よみがえれ『記憶』”」

橙色の輝きが一層強まり、世界を塗りつぶした。そして、ミライの魔力が、少女に姿を変える。

「ああ、そうか。思い出した」


「思い出してくれたんだね」

ミライは、幼いころに一度、近所の公園でリッカに出会っていた。でも、その後リッカは引っ越して、もう二度と会うことはなかった。

「うん。久しぶり……でいいのかな?」

「うん、久しぶり」


「もしかして、リッカは魔法使いだったの?」

「うん。引っ越すときもそれでいろいろあったから、お別れも言えなくて」

「そうだったんだ……」


「ねえ、あの時の約束も、思い出した?」

リッカの言葉に、ミライはバツが悪そうに答えた。

「えーっと、ごめん。思い出せないんだ」


「……そうだよね」

リッカは悲しそうだ。だけど、思い出せないものは思い出せないのだからしょうがない。


「あ!えっと、えーっと、なんで僕を魔法使いにしてくれたの?」

ミライはどうにか話題を変えようとする。

「それは、ミライ君なら、私を助けてくれるって、信じてたから」

「助けるって、どういうこと」


「私は今……」

リッカが話そうとした時、リッカの体にノイズが走る。

「リッカ?」

「ごめ……なさい。今……はもう限……界みた……」

途切れ途切れの言葉を残して、リッカの姿は元の魔力の形に戻った。今や目の前にいるのは、ミライと同じ姿の魔力だけだ。


夢はここで途切れ、目が覚めると、いつものように朝がやってきた。

(リッカ……)

携帯電話を見ると、ライチからメールが来ていた。


『リッカという子についてわかったことがある。今日の午後に僕のアトリエに来て欲しい。』

ミライは夢の出来事を整理しながら。行く旨を返信した。

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