1-8:ライチ2

「あらためて、俺は空地 雷一(そらち らいち)だ。魔法使いのお偉いさんの命令で、この町に拠点を構えてる」

「他にも魔法使いがいるんですか?」

「ああ、世界中にいるよ。で、マモリちゃんとは知り合いだったよね」


「はい。でも魔法使いだってことは知らなかったです」

「だって言うわけ無いじゃんそんなのさー!」

マモリの言葉はごもっともだ。


「ま、ミライも魔法使いになったことだし、アタシのことももう隠さないけどね。アタシの家は代々魔法使いなのよ。今はライチさんに協力してるってわけ」

「ライチさんも、魔法使いの家系なんですか?」


「いや、俺は何故か生まれつき魔法が使えたんだ。きっかけは魔法使いによって色々だけど、とにかく俺はすぐに魔法使いの息がかかった施設に保護されて、今じゃその施設で働いているってわけさ」

「あ、そうだ!ミライはどうして魔法が使えるようになったの!?」


「えーと……昨日、夢を見たんです。真っ白い場所で、リッカっていう女の子の声が聞こえてきて」

「リッカ?」

「リッカ……」

リッカ、その言葉にマモリとライチは反応する。


「その、リッカと言う子は、なんて言っていたかな?」

「助けてって言ってました。気がつくとカードを持っていて……」

「目が冷めても、そのカードは手元にあったというわけだね」

「はい」


「なるほど、ということは、魔力を分け与えられたパターンだね」

「あ!」

突然マモリが声を上げる。


「マモリちゃん、何か思い当たることでも?」

「昨日の夜だったんだけど、黒魔法の分体がやってきて、確か『リッカはどこだー』みたいなことを言ってたんだけど……」

「だけど?」

「逃がしちゃって……やっちゃんたぜ!」


マモリ渾身のやっちゃった顔をスルーして話を続ける。

「……となると、自体は少々厄介なことになる。ミライ君が狙われる可能性が高いね」

「僕の魔力を狙って、ですか?」

「ああ、そうだ」


「それから、リッカという子については、俺の方でも少し情報を掴んでいてね」

ライチは1枚の絵を取り出した。

「ミライ君に会う直前のことだった。リッカという子が俺に似顔絵を書いてくれと頼んできてね。しかし、描いた直後に消えてしまった。これはその時の写しだ。念のため撮っておいてよかった」


「ミライ君、この顔に見覚えはあるかい?」

「いえ、声しか聞こえなかったので、顔は見えなかったんです」

「フーム……」


ライチはしばし考えたのち、二人に告げた。

「どのみち、このままではミライ君が黒魔法に狙われるだろう。分体は撃退しても次々やってくるからね。根本的な解決にはリッカという子を探す必要がある。マモリちゃんはこの似顔絵の子を探してみてくれ」


「ミライ君は、できるだけ魔法の特訓をして、黒魔法に備えるんだ。今夜すぐにというわけじゃないけど、黒魔法は数日以内にキミに襲いかかる。今夜から夢で魔法の特訓をするように」

「はい」

ミライには、まだわからないことがたくさんあるだろう。しかし、自分の身を守らなければならないということだけでも、わかってくれれば今のところはよい。


「念のため、今日は俺の魔法を掛けておこう。万が一のことがあったら困るからね。手を出してくれるかな」

「はい。お願いします」

ライチは紫色の絵の具を筆にとり、ミライの手に印を書きながら呪文を唱えた。

「”飛び散り『増えて』囮となれ”」

ミライの手に書かれた印は、染み込むようにして消えていった。


「もし何かあったら、これが発動して囮になってくれる。そして、その間に俺たちを呼ぶんだ。いいね」

「わかりました」


「では一旦解散としよう。俺も調査をしないとね。マモリちゃんの方も頼んだよ」

「あいよ!」

マモリは元気よく返事をすると、部屋を出ていった。

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