最後の切り札

 翔弓子しょうきゅうしを背負った龍道院りゅうどういんは、戦場から離れようと必死に走る。

 突如燃え上がる爆炎や漆黒の瘴気など気にも留めず、ひたすら走り続けた。

「……ろして、ください……わ、たしは……の、人、を……」

「できるわけないでしょ?! そんな状態で! 大人しくしてなさい!」

 脳の抑制が燃え盛る翔弓子は、何度も下ろせと訴えてくる。

 しかし龍道院はそれに応じない。それどころではないからだ。

 今逃げなければ、確実に巻き添えを喰らって死んでしまう。

 そうでなくても、最悪あの二人が死ねば骸皇帝がいこうていの手によって確実に殺される。

 不死身でなければとうの昔に死んでいる、腐りかけどころか腐りきっている老人だが、しかし実力は折り紙付き。

 おそらく体が腐っているからこそ、生身の肉体を持っていた頃の実力は出せないのだろう。

 それを考えると、でも弱体化しているのだと思った方がいい。

 そんな奴――しかも不死身相手に強気に出られるほど、今の龍道院は実力差を知らないわけではなかった。

 いや、頭には完全に血が上り、煮え滾っている。

 しかしその血が沸騰するほどの熱を骸皇帝を殺すことにではなく、翔弓子を護ることに必死に回して走り続けていた。

 目の前で子供を救えなかった。その思いから、龍道院の後悔は深く重い。

 だがここで怒りに任せて戦うことは、気は楽になるだろうがいけないことだ。

 また一人、目の前で子供が殺される。

 それは死ぬよりも嫌なことだ。絶対に避けなければいけない未来だ。

 故に走る。全力で、ずっと全力で。

――あの……これ、食べる?

 初めて自分を救ってくれたのは子供だった。

 あの日初めて食べ物を恵んでくれたのは、自分達のその日の食糧にすら困っているはずの子供達だった。

――こっち来なよ……君、あったかいね

 あの日初めて自分を迎えてくれたのは、自分達の住む場所もない貧しい子供達だった。

 あの日人間の持つ温もりを教えてくれたのは、自分よりも弱弱しい子供達だった。

 だから、だから今度は自分が守る。

 大人達は守ってくれない。

 自分のことが可愛い大人達のことなど知らない。

 大人が守ってくれない子供達を、自分が守る。そう誓ったのだ。

 誰も見たことがない神に、自分自身に誓ったのだ。

 なのに今、目の前で子供が死んでいった。

 そして死して尚戦う兵士として戦場に立たされている。

 自分のせいだ。

 自分のせいだ。

 自分のせいで彼は死んだ。

 だからもう、目の前で子供を殺させない。

 それしか、彼に報いる術がない。知らない。

 だから走る。

 全力で、走り続ける。

 この子を護るために。

「要請します……私を下ろしなさい……これは、命令、で……」

「黙って! お願いだから黙って捕まってて! 死なせないから……あんただけは、死なせやしないから!」

 爆炎と噴炎を巻き上げて、魔天使まてんしはその風圧を利用して高く速く跳ぶ。

 それを追って来る異修羅いしゅらの亡骸は、六本の腕で三つの弓を握り締め矢を番えて構え、放つ。

 三つの矢は魔天使を追尾し、一発一発が時間差で弾けてその衝撃で襲い掛かるものの、魔天使には届かなかった。

 だが異修羅は着地後もさらに追撃の矢を放つ。

 雷霆をまとった金色の矢が一直線に魔天使へと走り、振り返った魔天使の頭を捉えるが、魔天使は直前で両の拳をぶつけ、矢を受け止めて自身の目の前で爆散させた。

 炎焼によるダメージはないが、しかし雷霆による裂傷が魔天使の体を斬り裂いた。

 さらに追撃で、異修羅は斧と剣を左右それぞれに構えて撹乱しながら攻めてくる。

 左目を目蓋ごと失っている魔天使だが、残った右目で異修羅の動きを捉え、そして斬りかかって来た異修羅の剣を上段蹴りで折り、さらに顔面を蹴り飛ばした。

 一一七七キロもある異修羅の巨体が、軽く蹴り飛ばされる。

 つい最近の戦闘では、ここまで鈍くはなかった。

 今の一撃くらいなら、生前の異修羅は軽く避けていたし反撃もしてきた。

 まぁそれくらい躱すことわけないが、しかし死んだことで能力値は著しく下がったと見て間違いないらしい。

 攻撃力が下がったとは思えないが、しかし反射速度や防御能力は脆くなったと見てよさそうである。

 ならば対処のしようもあると、魔天使が一瞬警戒を緩めたその瞬間、骸皇帝に純騎士じゅんきしが追い詰められているのに気付いて走る。

 横から直進して骸皇帝の頭を粉砕し、純騎士が逃げる隙を与えた魔天使だったが、すぐさま異修羅に追いつかれて薙ぎ払われた。

 すでにボロボロで痛む体が、さらに撃ち込まれて傷を付ける。

 瀕死の重傷から復活した魔天使だが、しかし実はこれは秘策中の秘策で本当はこんなところで使う代物ではなかったのだ。

 それは下界に降りて来て彼女と死別し、様々な地を転々とした挙句、いつから生きているのか知らない老婆の住む穴倉に厄介になっていたとき。

 突然老婆がくれた、秘薬だった。

 その唾液をまったく生み出さない色と臭いに、当時の魔天使は顔を歪ませたものだ。

――ホントにこれ、効果あるんだろうな?

――あたしゃあ魔女の中でも優秀な魔女さね。死にそうなときに飲みな、一度だけ生き返れるはずさ。ただしその体の病には効かないよ? それは手術したところで治らない難病だからねぇ

――魔女でも病気は治せねぇってか。人は呪えるくせによ

――死から一度でも遠ざかれるんだ、贅沢言うんじゃないよ。一つ忠告しておく。その薬は飲めばすぐ死ぬような傷でもすぐに治る。しかしあんたの場合は病気に栄養を与えるようなもの。病気はとてつもない速さで促進して命を縮めるだろう


――そのまえに片を付けることだね。まぁあんたにその力量があればだが

「……るせぇよ魔女め……」

 体力の低下は思ったよりも大きい。

 病気の進行を早めるとは言っていたが、しかしここまでしんどいとは思わなかった。

 少し動くだけで走る激痛、失いそうになる意識。

 異修羅と言う化け物を相手に、よくぞ応戦できているほどである。

 拳を振るえば痙攣し、炎を上げればピリピリと痛む。

 見れば左手には、黒い発疹がポツポツと浮き出てきているではないか。

「煉獄! 何をしているの!」

 純騎士の声で我に返る。

 少し考え事をしてしまっていて、状況がいくつか変わっていた。

 まず異修羅の右腕が一本もげていた。

 魔天使を薙ぎ払った一撃に腐りかけていた体が耐え切れず、根から取れてしまったようだ。

 それは骸皇帝の魔術によってすぐさま復活するが、しかし生まれたこの停止時間。

 合掌、そして大きく広げて合間に縫い上げた炎で刃を編む。

 即席の一瞬しか持たないそれで、魔天使は大きな的と化している異修羅の全身を斬り刻んだ。

 全身から腐りかけの黒血を噴き出し、異修羅は呻き声を上げながら背中から倒れる。

 攻撃力を維持してはいるものの、防御能力はやはり数段脆くなっている様子だ。

 生前ならばこの程度、切り傷などつくはずもなかった。

「純騎士! まだか!」

「気安く名を呼ばないでください! まだです!」

「わかった、今行く!」

 骸皇帝の生やす骨腕の波に追われる純騎士の元へ向かおうと、跳躍しようとした魔天使は脚を掴まれる。

 最初にもげた右腕が再生した異修羅が足首を掴み、離さない。

 その力強さに一瞬たじろいでしまう魔天使だったが、すぐさま拳を叩きつけてへし折り、拘束から逃れて跳躍した。

「死ねぇい!!! “光断じる闇の幕落ちアルム・コプシィ”!!!」

 予備動作なし。

 魔術発動の予兆なし。

 しかし名を持たなければ威力がないという唯一の弱点が、純騎士に回避の隙を与えた。

 連続で真上から降りかかってくる斬首刃ギロチンを、馬騎士ばきしの脚力を三割付加した状態で避ける。

 手は未だ、合掌を続けたままだ。

 体内の魔力を練り上げて強大にしていくのには、魔術の才のない純騎士では時間が掛かる。

 しかし本来ならば大勢の味方の援護の後ろで静かに練るものであり、このように敵の攻撃を回避し続けながら練るものではないので、さらに時間が掛かっているのもあるが。

 そして今回は相手が相当悪い。

 相手は魔術を極めた千年もの間生きる皇帝。

 すべての魔術が一段階も二段階も上であり、すべての魔術の発現速度が常軌を逸している。

 おそらくこの皇帝なら、発動に一日かかる大魔術ですら半日とかからず発動させるだろう。

 さらに言えば、先ほどから骸皇帝が予備動作ほぼ皆無の魔術ばかり行使してくる。

 怒り狂って直線的な攻撃になり、詠唱が必要な大魔術でも使ってくるものだとばかり思っていたが、詠唱もいらない予備動作もない速攻魔術ばかり使って来る。

 冷静さを欠いているとは思えない的確な攻撃とその手際には、感嘆すら覚える。

 千年もの間帝国を守り抜いたその実力は、正真正銘のものらしい。

「抜けておるわ!!!」

 背後から伸びて来た骨腕が、別の骨腕を持ってリーチを稼ぎ、手刀の形で突いてくる。

 手刀は運よく純騎士の鎧に当たり傷はつかなかったが、しかしそれは囮。

 その瞬間に伸びて来た骨腕が真正面から純騎士の顔面を捉え、殴り飛ばした。

 軽い骨の腕のくせをして、重い一撃が純騎士の鼻から血を噴き出させる。

 危うく合掌を解きかけたが、しかし意地と気合で持ち堪えた。

「おのれおのれおのれ! 小賢しい、実に小賢しい! 気力で持ち堪えるなどと無粋なことをしよってぇ!」

 怒り狂う骸皇帝の背後から、魔天使が拳を振りかぶる。

 しかし骸皇帝は振り返ることなく背後に杖を伸ばし、魔天使の胸座を突き飛ばした。

 重い一撃に一瞬心臓が止まりかけた魔天使は、自らの手で再び心臓を叩き、動かして一命を取り留める。

 そして間髪入れずに飛んできた漆黒の光弾をすかさず回避し、距離を取った。

 魔天使の左眼を焼き切った闇が爆散し、瞬間的に暗闇が訪れる。

 その闇に呑まれるようにして姿を隠した魔天使は、再び骸皇帝の死角を取った。

「小賢しいと言っておる!」

 無数の骨腕が波となって襲い掛かる。

 しかし魔天使の炎はその波すべてを灰塵へと変え、魔天使は骸皇帝の胸座を掴み投げ飛ばす。

 そして異修羅との交戦の最中に仕掛けた魔術陣を一斉に展開。

 そのすべての魔術陣に骸皇帝を叩きつけ、刻印を刻む大技を叩き込んだ。

「“光后朱雀ピロスヴェスティ”!!!」

 純白の刻印により全身が焼かれ、不死の能力の一部を担っている魔術が破壊される。

 しかしまだ九七も残っている魔術が起動し、骸皇帝の姿を再び作り上げていく。

 再生した骸皇帝は真白に燃え上がる魔天使に巨大な骨腕を振るい、掌打で吹き飛ばした。

 転げた勢いを殺し、地面に足の裏がついた瞬間に蹴り飛ばして駆け抜ける。

 骸皇帝がそれに気付き、純騎士ごと魔天使を貫こうと巨骨腕の指先で突いたそのとき、横から異修羅が飛んできてその指を斬り落とした。

 そして今度は骸皇帝に剣を向ける。

 しかし骸皇帝が手を前に出すと、異修羅の勢いは完全に殺されて止められてしまった。

 生前ならば決して貫かれることもなかったのだろう異修羅のかつて強靭だった胸座に、骸皇帝の刃が刺さる。

 そのまま真横に斬り払われて右腕を落とされた異修羅は、力なく倒れ伏した。

「フン……我が魔術の綻びの合間を縫って叛逆してきたか……しかし無様。滑稽よな。貴様はすでに我が臣下。我に抗うなどできはしないと言うのに」

「てめぇに殺された奴が、てめぇにはい皇帝陛下なんて素直なわけねぇだろうが」

 骸皇帝の魔術によって、鋭く尖った骨針が千本現れ射出される。

 しかもそれは魔天使ではなく、魔力を込めるため集中している純騎士へと走って行った。

 魔天使はすかさず跳び、すべての針を火炎で落とそうと試みる。

 しかし千本同時はさすがに届かず、何本かが魔天使に刺さって身を抉ってきた。

 その姿を無様な醜態と捉え、骸皇帝は高らかに嘲笑する。

「滑稽! 滑稽! 言葉数を増やして少しでも時間を稼ごうなどと思ったのだろうが、馬鹿者よなぁ! 魔術に予備動作も準備もいらぬ我に、そんな時間稼ぎが通じると思うてか!!!」

 再び千本の針が走る。

 今度は復活を果たした異修羅が、魔天使と純騎士の前に立って肉壁となった。

 ほとんどの針が体に刺さり、異修羅はもう何度目かの吐血をする。

「兄弟!」

「……まだ、倒せない?」

「純騎士! まだか!!!」

 言葉も交わせないほどに集中しているとわかりながら、聞かずにいられない。

 魔天使もそれだけ余裕が削がれており、限界なのだ。

 その状態を言葉の重さで承知している純騎士は、胸の中で応答する。

 もう少し、もう少しです!

「おのれ狂戦士! 貴様我の臣下でありながら我の邪魔をするとは! 貴様我を誰と思うておるか! 我は大帝! 黄金の帝国ヴォイの骸皇帝!!! 生きる者ひれ伏す永久の皇帝なるぞ! 頭が高い! 頭が高いわ狂戦士! ひれ伏せぃ!!!」

 骸皇帝の魔術によって、無数の針が刺さりながら振り返り魔天使に襲い掛かる異修羅。

 しかしその表情は苦しみと悲しみで歪んでおり、ずっと博士博士と悔し気に呟いていた。

 それにまた、魔天使は怒りをぶちまける。

「てめぇこら骸骨! こいつは死んで狂化が解けてる! ずっと戦うことしかできなかったんだ、死後の世界くらい自由にしてやろうって気概はねぇのかよ!!!」

「黙れ貴様っ!!!」

 異修羅の雷霆を帯びた剣が、魔天使に迫る。

 剣撃を躱した魔天使だったが追撃の雷霆を避けきれず、弱り切った体で受けてしまった。

 雷霆に声が焼かれて消える中、骸皇帝はそれらすらも上書きするくらいの声で怒鳴る。

「我に殺されることこれ光栄なこと! 我に仕えることさらに光栄なこと! ならば、自らを超越せし我に仕えられるなどこの世すべての中で至上の悦! 悦! 悦! ならば抗うことなどなかろうが! 我の帝国、我の力の礎となるのなら、これ以上の本望があるか!!!」


「我は絶対! 我は完全! 永久に死なぬ最も絶大なる皇帝なるぞ!!! 何故我に仕える至福を堪能しない! 何故我では不服なのか! 貴様らの求める皇帝に……! 求める皇帝になったというのに!!!」


「貴様が求める至高の座! 至高の存在! それが我だ! すなわち全世界の人間すべてが求める皇帝であり、求める力そのものだ! 不老不死という懇願が何万年と描かれ続け、遂に我はそれを成し遂げたのだ! これ以上の至高の皇帝が、我以上の存在がどこにあるか!!!」


「我はヴォイの骸皇帝! 人間の究極! 我が……神だ!!!」

 獣の骨を組み上げ、研いだ槍が異修羅を貫く。

 異修羅が完全な目隠しとなって回避し切れなかった魔天使は、右脚を切り裂かれながらも距離を取った。

 そして骸皇帝の背後を見て驚愕によって固まる。

 骸皇帝の背後で呻き声と啼き声を上げながら、阿鼻叫喚の隊列を作り上げる遺骨の兵団。

 その規模はもう国そのものであり、骸皇帝の存在そのものを証明するかのように、無数の骸が骸皇帝を悲し気に称えていた。

 皆が彼によって殺され、そして強制的に彼の軍門に下っていることが、明確かつ明白である。

「我が軍を見よ! 人は戦わずしても寿命によって老い、死に絶える。それは絶対の法則! 我に殺され、そして軍門に下ることもその法則と等しく絶対! それが我……神の所業である!」

 狂っているとしか言いようがない。

 異修羅など目ではなかった。

 この皇帝こそ本物の狂人だ。

 人間が寿命という制限を命に設けられたのは、不老不死という願いが長く叶わなかったのは、もしかしてこのためかもしれない。

 長い時間が、皇帝としての時間が、彼をここまで歪めている。

 彼の本質、元の性格は知り様もないが。

 しかしそう思わざるを得ないほどに、彼の言葉には重みがあり、そして狂っていたことは間違いない。

 彼は自らの軍の誰一人として彼に従っていないことも知りながら、完全無欠を謳っているのだから。

「さぁ下れ! そして下れ! 我が軍門に! 我が眼の光は、神すらひれ伏す威光なるぞ!!!」

「――」

 それは、前もって準備されていたことなのか。

 それは、誰かが仕組んでいたことなのか。

 しかしそう思わなければ誰も納得はできず、そう思うしかないほどに最高のタイミングで、神の威光は狂人の皇帝を眩く照らす。

 それは神と名乗った人間が作り出した幻想の光で在れど、しかし人の身で抗うことは叶うことなく。

 それは千年もの間生きた皇帝にすら言えることで、彼の光はそれを見た骸皇帝の動きを完全に制止させたのである。

 その光の名を、“神の後光・王の威光エンピストスィニィ・フォティナ”。

「……間に合ってよかった……今です、純騎士さん」

「貴様――?!」

 骸皇帝は光によって挟まれる。

 後ろから差す動きを縛る神の威光と、目の前から生じた青白の眩さ。

 振り返った首は動かないままだが、目の前の光を目で追ってその眩さを感じ取る。

 その眩さを発しているのが、ここまで何もせずただ魔力を蓄積させていただけの騎士であることを見た骸皇帝は、何も思わなかった。

 ただひたすらに、疑問を持つばかりである。

 なんだその光は……なんだ、その魔術は……!

 知らぬ、知らぬぞ……千年生きた我が知らぬ、地上の魔術?!

「骸皇帝陛下。あなたすら知らないはずです。この魔術は、代々騎士王国エタリアの騎士団でも有数の、副団長以上の座についた才能あふれる騎士でしか行使できませんでしたから」

 ならば何故、貴様が知っている――!?

 口も硬直している骸皇帝のその疑問を感じ取り、神の威光を放つ彼は微笑を浮かべて当然のごとく言い放った。

「当然でしょう。僕はリブリラの永書記えいしょき。世界のすべてを記述し続けていた、人間の一人なのだから」

「“聖なる決闘イーナ・プロス・イーナ”!!!!!」

 眩い瞬光が、骸皇帝を包み込んだ。

 これが純騎士最大に最後の切り札。

 この世界で唯一骸皇帝を殺すことが叶う、奥の手であった。

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