屍の軍勢

「“屍の軍勢ストラトス・トン・プトマトン”」

 屍の皇帝、骸皇帝がいこうていが魔術を紡ぐ。現れた混沌からは大量の骸骨兵が這い出て、カタカタと気色の悪い音を鳴らして立ち上がった。

 その手には剣に槍、盾に銃。それぞれが武器を持ち、武装している。それらを従える骸皇帝は兵士にならなかった残りの骨を浮遊させ、勝手に組み立てられてできた椅子に腰を据えた。

 天界が置いた玉座を見つけ出し、座らなければならないという勝利条件。だが彼は初日からずっと、この魔術の準備をしていた。

 無限に現れる自分のしもべ、千年かけて作り上げた屍の軍勢。それを今解き放ったことに、大きな意味はない。

 普通の魔術師ならば命すら代償にしてでも使えないこの禁忌さえ、彼にとっては造作もないことだ。故にこれを発動したことに、特別な思いはない。

 ただこの序盤で繰り出すなら、これがいいだろうと思ったまでのことだ。

「さぁ、少々時間がかかったが、準備は整った。行けい、我が軍勢! すべての敵を、すべての参加者を根絶やして来い!」

 カタカタと気色の悪い音を鳴らしながら、軍勢は次々と骸皇帝の隠れ家である洞窟の奥から這い出てくる。

 有象無象の骸骨兵達が向かうのは、大陸全土。狙いは全参加者の命。持ちうる魔力と微音を響かせながら、ゆっくりと進行していった。

 

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