24-4.負けたくない!
「センターからこっちまで引きつけてから各個撃破」
「りょーかい」
「尾上、動かないでよ」
「無論だ」
「じゃあ、いきますか」
「おー!」
それからはひたすら乱戦。かすったり、よけられたり、転んだりしながら一気に数が減っていく。
数の上では白組優勢。
「おかしいな」
「ん」
「てっきり先陣はあいつだとおも……」
言いさした白石の目に横合いから突っ込んでくる正人が映った。
「来た!」
的にされたのはもちろん中川美登利。
「予想通り」
少しだけ見返って美登利は笑う。
「……ッ」
横薙ぎの一撃をうまくいなされ正人の態勢が崩れる。
「バッカ、差しの勝負じゃねえんだよ」
白石がその頭上を狙う。正人は体を捻ってそれをかわした。
地面を蹴って一度距離を取る。
すると今度は紅組の大将が自ら突撃してきた。
「やっぱり来た」
「予想通り。白石」
「りょーかい。あの顔狙ってやれないのは残念だけど。行くぞ!」
白石渉に率いられて三人が安西に向かう。
一人残った美登利に再び正人が打ち込んでくる。
「だから、予想通りなんだって」
振り返りもしないで美登利が言う。
気配を感じたときには遅かった。
正人の後ろに平山和明がいた。長身を生かして軽く棒を振る。
見届けもしないで美登利は安西へと走る。
白石たち三人が安西のトリッキーな動きについていけず返り討ちに会っているところへ駈け込んでいく。
さすがの安西も無防備だ。
「く……っ」
気配で今まさに自分の風船が割られようとしていることがわかる。
美登利が安西に向かって踏み込む。
(諦めない)
今度こそ絶対に、負けたくない! あとはもう無我夢中だった。
確実に仕留めるはずだった。絶好のチャンス。それなのに、
「……っ」
踏み込んだ足元がぐらついて、すんでのところでかわされた。
だがまだ一対一、たとえ相手が安西でもスピードなら負けない。
体を返し追撃しようとしたところで、パンと頭上で鋭い音がした。
(え……)
さすがに驚いて美登利は後ろを見る。
池崎正人がぜいぜいと肩で息をしながら膝をついたところだった。頭の赤い紙風船は無事。
更に確認すると後方で平山和明がこっちに向かって土下座しているのが見えた。白い紙風船が割られている。
「うそ……」
「よくやった! 池崎くん、あとは任せろ」
白組の猛者は既にことごとく討ち取られている。それでなくとも安西の足にかなう者などいない。
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