メドゥーサの呪い

【遠い昔の神話の物語】

 ゴルゴン3姉妹の1人であるメドゥーサは、たいそう美しい容姿をしていました。

 その美しさから海の神ポセイドンの愛人となり、女神アテナの神殿で密会をしていました。

 しかしある日、密会していることをアテナが知ってしまいます。

 そして、アテナの怒りを買ったメドゥーサは怪物にされてしまうのです。

 美しかった顔は醜く変わり、つやつやの髪は生きた無数の蛇に変えられ、イノシシのような歯と青銅の手になり、背中には大きな翼が生えてしまいます。

 そしてその容姿よりも恐ろしいのが「見たものを石に変えてしまう」という能力でした。

 メドゥーサ退治を命じられた英雄ペルセウスは、メドゥーサを直接見なくてよいようにピカピカに磨かれた鏡のような青銅の盾を使って、メドゥーサに近づき、ハルパーという鎌の武器を使い、見事メドゥーサの首を切り落としたのでした。



【少し前の魔術の物語】

 それから時が経ちました。場所も変わりました。メドゥーサのことはここではない遠い場所で、遠い昔に起こった古い伝承として語られるようになった頃。

 ある大きな町で石にされた牛が発見されたのです。いえ、正確にはでした。

 それから度々、その町では、牛や豚が石と化した姿が発見されるのです。

 町に住む住民は恐がり、「メドゥーサがきた」と言い始めました。

 石化された動物たちは不気味だと恐れられ、町の外に出されることになりました。動物たちはカチカチに固まっており、重く、なかなか動かせないので、外に出すのも一苦労でした。

 大勢の住民が集まり力を合わせて、石化した動物を押すようにして町の外に出したのです。しかし、あまりにも勢いよく押し出したため、入り口の門や壁にぶつかってしまったのです。

 幸い、門と壁は少しだけ損傷しただけですみました。

 

 石化はその後も発生し続けました。しかも動物だけでなく、赤ワインやコーヒー、柿といった飲み物、食べ物までも石化するようになったのです。

 しかしここまで石化されているのに、メドゥーサを目撃したという住民は誰ひとりとしていませんでした。

 もっとも本当にメドゥーサを目撃したら、きっと石になっていることでしょう。

 次第に住民は、これはメドゥーサではなくメドゥーサの残した怨念、つまり「メドゥーサの呪い」だと言い始めました。

 「メドゥーサの呪い」は実態のない恐怖として、その町で恐れられたのです。

 

 石化はさらにひどくなり、町中のものが固まり始めました。このままでは大きな町は機能しないどころか、滅んでしまう恐れもありました。

 そこで「メドゥーサの呪い」を解決すべく、町の外から魔術師が呼ばれました。

 魔術師は分厚い魔術書を読みあさりました。魔術書には「石化されやすい動物」、「石化後の町の影響」、「石化を止める方法」などが書かれているようでした。

 魔術書をもとに、ハーブや果物で調合した「聖なる解毒水」を作り、石化した動物に浴びせました。さらに魔除けとしてリンゴを投げつけ、その間、魔術師は聞いたことのない言葉で魔法を唱え続けていました。

 すると動物たちはたちまち、姿、町の外に出て行きました。

 住民たちは大喜びして、町中の石化したものへ「聖なる解毒水」を浴びせ、大量のリンゴを投げつけました。


 「メドゥーサの呪い」が一体何だったのか分かりません。ただ、魔術師が来てからは、町では呪いを解く方法を身につけたのでした。



【ごく最近の科学の物語】

 ある若い女性は便秘に苦しめられていました。今日も大きな町……いえ、大きな腸、つまり大腸で石のように固くなった便があると感じていました。

 「便秘になりやすい食べ物」という文書を魔術書……いえいえ、インターネットの記事で見ると、牛や豚、肉類が一番便秘になりやすいみたいでした。そのほかにもカフェインを多く含むコーヒーやタンニンを多く含む赤ワイン、干し柿も便秘になりやすいようです。

 この前、無理に出そうとしたところ、肛門を傷つけてしまい、血が少し出ました。

 インターネットの記事を見ると便秘が深刻化すると、町壁……いえ、腸壁が傷ついたり、さらに大腸がんの原因にもなるそうです。

 便秘の原因はよく分かりません。もっとも多い原因はストレスによるものらしいのですが、特に心当たりはありませんでした。

 便秘はいっこうに治る気配がなく、むしろひどくなっていきました。

 女性は魔じゅ……、インターネットで「便秘の解消方法」を調べ、便秘に効くというミントやレモンを入れた「デトックスウォーター」を飲み始めました。

 それから便を柔らかくしてくれる水溶性食物繊維を含んだリンゴを食べ始めました。

 さらに、「ジオクチルソジウムスルホサクシネート、ビサコジル、ピコスルファート」とまるで呪文のような成分が書かれた便秘薬を飲みました。

 すると、数日後にはスルッと快適な便が出るようになりました。


 めでたし、めでたし。




※この物語はフィクションであり、便秘薬による効果には個人差があります。

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