菩提樹の木陰で

作者 谷川流慕

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★★★ Excellent!!!

恋愛もせずヴァイオリンに打ち込む主人公倉井倫子の、超絶リアルな留学物語。
ドイツでのリアルな描写、巧みな文章とクラシック・ヴァイオリン、そしてストイックな様には、もしかしたら、「うっわー、高尚過ぎて、知識がない者には付いて行かれないかも?」と一見心配されるかも知れませんが、怖じ気付くことはありません。
音楽に詳しくなくても物語に入り込め、スラスラと読めてしまいます。

この主人公、真面目で不器用な生き方をしてきましたが、結構面白いのです。
ヴァイオリンでも恋でも痛手を負いますが、女性を愛せない理容師志望のハンスと出会い、ドイツの寿司屋に行く場面では、ちょっと笑えて、読み手も同時に癒された気分になります。

ライバルの中国人・芽衣(ヤーイー)とコンミス(コンサート・ミストレス)やソロの座を競ったりする場面と、本番も見物です。

そして、ちらっとマフィアの存在に緊張感が走りますが……

彼女がお固いのは生まれ育った環境が大きかったかも知れません。
この年頃は、親からの自立や自分を見つめる時期でもあると思います。彼女に限らず、自立しようと考える若者たちの親との確執をどう結着つけるのか。

音楽ものとしてだけではなく、人間的な部分も描かれていて、かなりリアルな読み応えのある物語となっています。
不器用な主人公の、人として成長していく姿をのぞいてみませんか?

★★★ Excellent!!!

ヴァイオリン、オーケストラ、音楽・・・
技術的な事や学術的な事も含め、かなり本格的な内容だと思います。

主人公は良く言えばストイック、悪く言えばぶっきらぼう。
自分のアイデンティティに執着するあまり、その束縛から逃れる事が出来ません。

理容師見習いのハンス、好敵手であるヤーイーとの出会い、そして両親との関係。

個と調和、自分と他人・・・・

調和とは、仲良しや慣れ合いの事ではなく、相手を知り、認め、敬う事。

そして他人の中の「光るもの」を見つけ出す事は、自分の中の何かを光り輝かせる事。

主人公の、あまりに真っ直ぐでブレずに生きて来たからこそ、自分の中に芽生えた変化に戸惑い、苦悩する姿、そしてそれらを徐々に受け入れる過程が荒々しくも的確に描写されていてる、素敵な作品だと思います。