第17話 おでかけ 2

 昼食を終えたケント達は再び街の中を歩いていた。


 さすがにこの時間帯の王都は、特にこの大通りは人で溢れかえっている。休日ということもあって学園の生徒もちらほらと見かける。


「それで、これからどうするんだ?」

「そういえば何も考えてなかったわね」

「おいおい……」


 当てもなく歩き続ける四人。大通りもそろそろ終わりかといったところでケントがある店を発見した。


「へえー、武器屋なんてのもあるのか」

「そりゃああるわよ。街の外には魔物が一定数はいるからね。そういうのを間引いてる人たちの中には被支配者層だっているのよ」

「いや、それは知ってるんだけどさ。なんていうか実際に見てみると趣深いというか」


 ニフルの町では武器屋を見たことがなかったケントは改めて日本との違いを感じる。戦争に使われるわけではないが、そういう世界なのだといやでも実感させられるのだ。


「見ていってみるかい?」

「ああ、そうするよ」



「へいらっしゃい! ってなんだガキか」


 店内に入るや否や、店主と思しき強面の男性が元気よく出迎えたが、ケント達を見てがっかりしたと言わんばかりに態度を変える。


「ははは、ガキですみませんね」

「これでも一応学園の生徒なんだけど……」

「そんなこと知ったこっちゃねえな。ガキはガキだろ? 武器ってのは結構重たいからな。細身のものもあるが子供の力で振れるもんはあんま置いてないんだよ。まあ見ていくだけなら構わないぜ」


 店主は子供だからと態度を変えたのではなく売れる物がほとんどないから客として見れないようだった。商売人としてその態度は如何なものかと思ったケントだったが、とりあえず武器を見ていくことにする。


「あんまり種類はないんだな」

「ここにあるのは消耗品だからな。変わったものが欲しけりゃ鍛冶屋に自分で注文しな」


 見渡す限り、店内にあるのは所謂普通の剣や槍だった。槍を扱ったことのないケントは剣ばかりを見ている。そこにあるのは両刃の重さと勢いで叩き切るタイプの剣で重さもなかなかのものだった。


「うーん、確かに俺じゃああ使える気がしないな」

「まあそうだろうな。お前さんも体は鍛えてるみたいだが大きさが足りてねえからな」


 店主の言葉は身長があまり伸びないことに少しコンプレックスを持っていたケントの心にクリティカルヒットした。目に見えてダメージを受けているケントを見かねた店主はフォローを入れようとする。


「まあ、その、なんだ坊主。女が好んで使う細身の武器ならワンチャンあるって」

 しかしそれはまったくフォローになっていなかった。




「で、結局剣買ったんだ……」

「いや、護身用に持っておくのも悪くないかなって」

「それなら普通ナイフ買うでしょ」


 ローラの指摘に目をそらすケント。彼の中に多少の武器への憧れがあってそうさせたことは彼しか知らないが、何も考えがなかったわけではない。


「木剣より重たいからさ。鍛錬に使えるかなって」


 彼が買ったのは店主の勧めもあり少し細めだったがなかなかの重さがあるものだった。いざとなったらギリギリ重さで叩き切れるようなサイズである。


「まあ確かに素振りするだけで今までよりかなり負担があるでしょうね」

「それはそうでしょうけど、この後もそれ持ったまま歩くつもり?」

「うっ、考えてなかったな……」


 少しムキになって我を忘れていたらしい。


「はあ、ひとまず学園に戻りましょうか」

「私としてはケントとステフの特訓を見てみたいですね」

「また情報収集か?」

「いえ、単なる好奇心です」




 息抜きでおでかけをしたつもりだったのに結局最後は特訓になってしまったケントとステフはただただ疲れただけの様な気がしていた。


「まあいっか。始めるぞ、ステフ」

「オッケーだよケント」


 ケントとステフは風の身体強化をそれぞれ発動させると同時に、互いに走り出す。二人の特訓は次のステージに移っていた。以前はステフが防御に徹していたがそれでは特訓にならないと互いに攻防織り交ぜることにしたのだ。


 ケントがセシリアの剣技をまねすると同時にステフは学園で培われた剣技で対抗する。しかしセシリアの剣技にどんどん近づいていくケントにはそれだけでは足りない。ステフもまたその動きについていけるようになっているのである。


「これはまたすごいですね」

「私も驚いたわ。ちょっと前のステフとは別人じゃない」


 感心するように言うサラと心底驚いているローラ。


「これじゃあステフも対抗戦に選ばれちゃうんじゃない?」

「私も混ざりたくなってきますね」


 この二人の感覚はかなり違っているようだ。


「どうしたステフ! もう疲れたか!」

「いつもいつも思うんだけど、君の体力はおかしいんじゃないのかい……」


 セシリアにみっちり鍛えられたケントの体力にステフはやはり追いつけない。こんな感じで特訓はいつもステフが先に動けなくなり終わるのだ。




「二人ともお疲れ様です。ところで、身体強化以外の魔術は使わないんですか? 使わないとあまり意味がないように思えますが」

「それを言われると困るんだけど、ひとまず今は近接主体で。魔術については今考え中だからさ」

「そうだね」

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