第125話 幻惑の町 その2
「どうも~。私はこの街の魔女のディーネと申します~」
そういって人影……青いローブに身を包んだ妖しげな女は、どうにも胡散臭い笑顔を称えながら、俺たちに向けて手を振った。
「……はぁ? 魔女?」
いきなりそんな自己紹介を受けた俺とエルナ、そしてリゼは思わず顔を見合わせてしまう。
「うふふ~、知っていますよ~。三人は、ウルスラさんのお知り合いでしょ~?」
ウルスラ……その名前が出てきて俺は思わず身構える……コイツは危険なやつだと瞬時に理解できた。
「……貴様は、帝国所属の魔女か?」
エルナが鋭い声で女……ディーネに向けてそう訊ねる。
しかし、ディーネは首をゆっくりと横に振る。
「違いますよ~。今の私はただの魔女です~。ウルスラさんとはお知り合いなだけです~」
「今は」……少しひっかかる物言いだが……ディーネは笑顔のままだ……まるで感情が把握できない。
「……おい、エルナ。ディーネという名前に心当たりは?」
俺がそう訊ねてみると、エルナは首を横に振る。どうやら……少なくとも、コイツの登場は帝国とは関係ないようにも思える。
それにこのぼんやりとした感じ……今まで会ってきた魔女……ウルスラなんかとも微妙に違うように思える。
「さぁ~。どうぞ~。まずは私の家に~」
そう言ってディーネは霧の奥へと歩いていってしまう。このままだと確実にやつを見失ってしまう……
「ロスペル様……どうしますか?」
リゼが不安そうにそう訊ねる。エルナもどうするのかという視線で俺を見ている。
「……どうもこの街はおかしい。で……こういう場合は、魔女が関わっている事が多いんだ。だから……アイツに何か知っているのか、聞くしか無いだろうな」
俺がそう言うとリゼとエルナは小さく頷いた。結局、俺達は霧の中、わけの分からない魔女の後を、ついていくことにしたのだった。
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