第87話 取り戻したいモノ その3
宿屋には案外簡単に入ることが出来た。
しかし、宿屋に入る前から、宿屋の店番に至るまで俺達のことをじろじろと見ている。
「まったく、この街丸ごと、クラウディアに魅了されているってことだね」
ウルスラは呆れた様子でそう言う。大げさに聞こえたが……それは間違いではないように思えた。
宿屋では部屋は三つ取ることが出来たが、とりあえず今後のことをどうするかということで、俺の部屋に集まった。
「で……クラウディアは、この街の奴らを魅了してどうするつもりなんだ?」
俺がそう切り出すとウルスラは肩をすくめる。
「さぁ? 彼女の事は僕にもよくわからないよ。どうするつもりなんだろうねぇ」
興味なさそうな様子でそう返してくるウルスラ。
「……この街、反乱の街って呼ばれているんだよな? だったら、反乱をおこすつもりなんじゃないか?」
「帝国に対してかい? 彼女は帝国の将軍だった人間なんだよ? それなのにどうして帝国に歯向かうのさ?」
「それは簡単だろう。そもそも、その将軍様がなんでこんな辺鄙な街で暮らしているんだよ。それ自体おかしな話じゃないか」
俺がそう言うとウルスラは黙ってしまった。そして、暫くの間俺のことを見てから、チラリとリゼの方を見る。
「姫様も、知りたいかな?」
「え……わ、私は……」
「いやね。クラウディアがどうしてこんな街にいるのか……僕も詳しい事は知らないよ。だけど、聞いた話でなら君達に説明することはできるんだ。聞きたいかい?」
リゼは不安そうに俺の方を見る。俺としてもそんな風にもったいつけているウルスラに対してどこか嫌な感じを受けた。
「……聞きたいです」
押し出すような声でそういったのは、リゼだった。辛そうなあ顔でそういうリゼ。俺はウルスラの方を見る。
あのウルスラでさえそんなリゼを見て、あまり話をしたそうには見えなかった。
「……わかった。じゃあ、話すよ」
大きくため息をついたウルスラは話を始めるようだった。
「……簡単に言うと、テレーゼと同じ理由だ、って僕は聞いた」
「テレーゼと同じ?」
「うん。つまり、危険すぎるんだよ、クラウディアも」
ウルスラは深刻そうな顔でそう言ったのだった。
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