第82話 不服従の理由 その2

「そうか。では、今日はこの街に泊るのか?」


 クラウディアが俺に訊ねる。


「ああ。そうする」


「だったら、是非ともこの屋敷に泊っていくと良い。歓迎するぞ?」


 クラウディアはニコニコしながらそう言った。俺はもう一度エルナの方を見る。


 人形の目……まさにそれだ。リゼを人形にしてしまった俺だからこそ言える。


 間違いなくエルナの目には……生気がない。まるで操り人形のような目をしているのだ。


「……いや。悪いが、宿屋に泊る」


 俺がそう言うとクラウディアは目を細め嬉しそうにして俺を見た。


「そうか。残念だ。この街には宿屋は一軒しかないが、ゆっくりしていってくれ」


 俺は立ちあがった。そして、先程から完全に呆然自失状態のリゼの手を引き、そのまま屋敷の玄関へと向かう。


 途中、廊下でメイド達にすれ違った。


 皆、人形のような目をしている。エルナとまったく同じ目だ。


 そして、俺はかすかに思い出していた。


 帝国陸軍三八部隊……通称「人形部隊」のことを。


「では、また明日、かな?」


 玄関まで来るとクラウディアが俺達にそう声をかけた。


「ああ。ところで一つ確認しておきたい」


「ん? なんだ?」


 俺はジッとクラウディアを睨みつける。クラウディアは特に動じる事もなく俺を見ている。


「エルナには、きちんと部屋を与えているのか?」


 俺の質問に拍子抜けしたのか、首をすくめてクラウディアは俺を見る。


「当たり前だ。二階の使用人室ではあるが、きちんと部屋を割り当てているよ」


「そうか。では、また明日」


 俺は早足で、リゼを連れて屋敷を出た。


 門の前には門番がまだいた。門番達の目も確認する。


 やはり……人形だ。生気のない瞳で俺達を見ている。


「……エルナ」


 と、ようやくリゼが我に返ったようだった。


「どうして……どうして私を見捨ててしまったのですか……」


 悲しそうにそう言うリゼ。


「見捨てたんじゃないよ。悪いのはクラウディアさ」


 と、俺とリゼはその声に驚く。


 振り返ると、小柄な少女が俺達の方を見ていた。


「……ウルスラ。お前……」


 その少女はまぎれもなく、フランチェスカ……ではなく、ウルスラその人だった。

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