第73話 反乱の街 その3

 そして、その日はずっと歩き通しだった。


 俺もウルスラも、リゼもなにも喋らずただ歩いたままだった。


 そして、夜になると平原で野宿となった。


 焚火を起こし、全員それを囲んで座った。


「クラウディアとは、会ったことはあるからね」


 突然、ウルスラは焚き火を見ながらそう言った。


「どんなヤツなんだ?」


 それを聞いてほしかったのであろう、俺がそう訊ねると、嬉しそうな顔でウルスラはこちらを見てきた。


「どんなヤツ、か……難しい質問だね。悪い人ではない……とでも言っておこうかな」


 なんともフワフワとした答えでまるで的を射ていなかった。


 もっとも、ウルスラの言葉に俺は期待などしていなかったが。


「で、ソイツが統治しているリベジスタっていう街は、どんな街なんだよ」


「なんだ。明日着くんだから、明日実際見ればすぐにわかるじゃないか」


 ウルスラはニヤニヤしながらそう言った。俺がイラ付いた様子で睨みつけると、ウルスラは小さくため息をついて焚火を見ながら話を続ける。


「リベジスタ……又の名を『反乱の街』とも言う」


「反乱の……街?」


 俺がそう聞くと、嬉しそうにウルスラは目を細める。


「おや。本当に知らなかったようだね。まぁ、君は戦争に参加したといっても、その後はすぐに故郷に帰ったんだったか」


「ああ。で、どんな街なんだ?」


 俺の質問に答える代わりに、ウルスラはリゼの方を見る。


 ウルスラに見られたリゼは、その視線を避けるように俺の方に身体を寄せてきた。


「姫様は、知っていたのかい?」


「……いえ、存じませんでした」


「そうだろうね。さっきも言ったけど知らない方がいい。あの街は、反乱の街……つまり、ズール帝国に対しいつか反旗を翻そうとする者達が集まる街だからね」


 それを聞いてリゼはそのガラス玉の瞳を丸くした。俺としてもそんな街の存在は初めて知ったので、少し驚いた。


「ははっ。驚いたかい? もっとも、反旗を翻すといっても、革命を起こそうって言うんじゃない。ただ、ズール帝国の皇帝に従わない、というだけなんだ」


「それじゃ……誰に従っているんだ?」


 俺がそう聞くと、ウルスラは俺の方にその胡散臭い笑みを向けた。


「もちろん、街を統治しているクラウディアさ」

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