第60話 無邪気な魔女たち その1

「……ウルスラ。良ければ、聞きたいんだが……一体誰をお前は魔人形にしようとしていたんだ?」


 先程の発言から、俺がそう聞くと、ウルスラは何も言わずただ俺の顔を見つめ返してきていた。俺も黙ったままでウルスラを見る。


「うーん……弱ったな。それはちょっと、言いにくいというかね……」


「別に、言いたくなければいいんだが」


 すると、ウルスラはいきなりエルナの方を見る。見られたエルナは怪訝そうな顔でウルスラを見返した。


「なんでしょうか? マイスター?」


「テレーゼ。エクスナー少尉って、確か皇帝陛下を暗殺しようとしてたよね?」


「え? ああ、はい。ありましたね。そんなこと」


 エルナはそう言われてギョッとしたようだった。しかし、そのままウルスラは表情を変えずにエルナを見ている。


「そ、そうなのですか? エルナ?」


 心配そうに聞くのはリゼだった。エルナは怯えた様子でリゼを見る。


「……え、ええ。そうです。姫様」


「な……なぜそんな……」


「それは……もちろん、現皇帝を殺せば、戦争が終わると思ったからです……」


「本当に、それだけかな?」


 ニヤニヤと気味の悪い笑みを浮かべながらそう言ったのは、ウルスラだった。


 その言葉を聞き、エルナはウルスラの方に顔を向ける。


「……なんですか。マイスター」


「本当に? 君は本当にそれだけの理由で現皇帝を殺そうとしたのかな?」


「あ、ああ……そうだ。戦争を引き起こした第一王子である現皇帝を殺せば戦争は終わる……私はそのために暗機隊に入った。何より、そのための暗機隊だ!」


 興奮気味にそうエルナが捲し立てるのとは対照的に、ウルスラはその様をニヤニヤしながら眺めていた。


「テレーゼ。エクスナー少尉って、生まれはどこだったかな?」


 ウルスラのその言葉を聞いて、瞬時にエルナが飛び出した。


「き、貴様ぁぁぁ!」


 既に俺が動く間もなくエルナはウルスラに飛びかかっていた。

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