第51話 魂胆と目的 その7

「……はっ。違うよ。俺は愚かなだけだ。気づいていなかったのさ。リザが俺のことを嫌っていたってことをね」


「嫌っていた……そんなことは、ないと思います」


 その言葉を聞いて俺は少しムッとしてしまった。そして、すかさずその理由を聞いて見る。


「なぜわかる? お前はリザに会ったこともないだろう?」


「ええ、そうですね……ですが、分かるんです」


「だから、なんでだよ?」


「……上手く言えませんが、この身体のせいかもしれません」


「……なんだって?」


 そして、なぜかそっとリゼは自分の胸の部分に両手を合わせる。


「……この身体は、ロスペル様がリザさんに似せて作った器……言うならば、この身体こそがリザさんそのものなのです。その器に入った私の魂は、自然ともしかするとリザさんらしく振舞おうとしているような気がするのです」


「気がするって……ははっ。面白くない冗談だ。お前は、リザには全く似てないよ」


「ええ。わかっています。ですが、リザさんの人形という存在として今ここにいる私にはなんとなくですが、リザさんは、やはりロスペル様のことを嫌っては行かなかったように思えるのです」


 そう深刻な面持ちで言うリゼ。


 俺としては、そう言われることは悪い気分ではなかった。むしろ、そんな風に言ってもらえるだけでもなんだか救われる気さえした。


 しかし、俺がリザを殺したと云う事実は変わらない。未だになぜ俺はリザを殺してしまったのか、その時どういう状況だったのかさえ思い出すことが出来ないが、それは変わらないのだ。


 だから、そう言ってくれるリゼに対してむしろなんだか申し訳ない気がして。逆に俺は暗い気分になった。


「……そうか。ありがとう」


 俺の声の抑揚で反応が予想外だったのか、リゼは少し悲しそうにうつむいた。


「その……じゃあ、私はこれで」


「……すまん」


「え?」


 リゼが部屋を出て行く時に、思わず俺はそう呟いてしまった。しかし、リゼは俺に対し聞き返すこともなく、ただ少しうっすらと笑みを浮かべてそのまま部屋を出て行った。


 そうだ。人形は眠らない。眠り必要がないからだ。


 ということは、リゼは今夜も一人で寂しい夜を過ごすことになる。それがどんなものなのか、俺には想像がつかない。


 ただ、ここにきてようやく、俺は自分の欲望のためだけに、自分がやりたいと思った為だけに……無関係の少女を巻き込んだという自覚が芽生えてきたのだった。

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