第49話 魂胆と目的 その5

「……寝るか」


 今一度ベッドに横になり、目をつぶろうとした矢先だった。


 コンコン、とドアをノックする音が聞こえた。


「……誰だ? 今度は」


「あ……私です。リゼです」


 声が聞こえてきたので、起き上がると、俺は扉に向かい、そのまま扉を開けた。


「ああ、よかった……起きてらっしゃったんですね」


 安心した様子でリゼはそう言った。背中には既に眠ってしまっているフランチェスカを背負っている。


「なんだ。フランチェスカの奴、眠ってしまったのか」


「ええ……長旅で疲れたのでしょう」


 そういってリゼはフランチェスカをベッドにそっと寝かせてやった。


「ふふっ。可愛らしい寝顔ですね」


 確かに、リゼの言うとおりフランチェスカの寝顔把無邪気だった。


 しかし、この無邪気なヤツの中にはもう一人胡散臭い感じの奴の魂が入っていると思うとあまり素直に可愛らしいとは言えなかった。


「では、私はこれで」


 リゼはそう言って部屋を出て行こうとした。


「あ、ちょっと待て」


 思わず俺はそう言ってしまってから、それが反射的に出た言葉ということが自分でもわかった。


 リゼは予想外の呼びとめに驚き、ガラス玉の目を丸くして俺を見ている。


「どうしましたか? ロスペル様」


「あ……お前に、聞きたいことがある」


「はい。なんでしょう?」


「その……お前は、俺のこと、恨んでいるだろう?」


「え?」


 リゼは驚いたような表情でそう言った。


 いきなりのことだったからそれはそうだろう。だが、俺としても当たり前の質問をしてしまったと思った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る