第24話 償い
「姫様!」
女軍人がすかさず人形に駆け寄る。
「私は大丈夫です。それより……ロスペルさん。分かっていだけましたよね?」
「……ああ。分かった」
俺は思わず笑ってしまった。それに気付いたのか不思議そうな顔で人形は俺を見る。
「なぜ、笑うのですか?」
「……ああ、すまない。だって、お前はリザじゃないからな。リザは……そんな崇高なことは言わない。リザは普通の女の子だからな。首を絞められたら怒るし、恐怖するだろう。そんな俺にはもう二度と会いたくない……ふふっ。分かってはいたんだがな……お前が……リザじゃないってな」
力が抜けてしまって、俺はそのまま座り込んでしまった。
そうだ。分かっていたのだ。
人形の中身がリザじゃないこと……俺が取り返しのつかないことをしてしまったこと……そして何より……リザが俺に、会いたくないということも。
「……お前、名前、なんだっけ?」
「え? 私、ですか」
俺は人形に顔を向け、そう尋ねた。人形は意外だったのか目を丸くしていたが、嬉しそうにして俺に微笑みかけた。
「リゼ・フォン・ベルンシュタインです。ロスペル・アッカルドさん」
「……そうか。リゼ、悪かったな。人形なんかにして」
「……いえ。いいのですよ」
やっぱり、コイツはリザじゃない。リザはこんな風に強くない。弱い女の子だった。そして、その弱い女の子一緒にいた俺自身も、同様に弱い男だったのだが。
俺は立ち上がると、そのまま村長の家の出口へと向かった。
「お、おい! ロスペル、どこへ行く!」
「あ? ああ、えっと……アンタの方は、名前、なんだっけ?」
「はぁ? なんだ? さっきも言ったのだが……私は、エルナ。エルナ・エクスナーだ」
「そうか……エルナ。お前、どうしたいんだよ?」
「え? ああ、だからだな、私は姫様をどうにかして元に――」
「知らん」
「へ?」
エルナは意味の分からないという顔をしていたが……俺は今一度はっきりと言うことにした。
「そこの姫様を人間として元に戻したいって言うんだろう? 残念だけどな、俺はその方法は知らない。だから……俺ではリザを人間に戻せないんだよ」
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