真実 5

「ちょっとわかんないよ。

手遅れって何?どこに連れて行くんだよ」


手を引き進んでいく男へ声をかける。



「・・・・」


しかし男は黙ったまま。

何も答えてくれない。



「俺は英雄になる男だぞ?・・・だってそう約束したんだ。眞鍋さんと。

これから俺は有名になって皆から憧れる存在に・・・・」


半分腰が抜けてしまい、上手く歩けない。

それなのに男はどんどん俺の腕をつかみ進んでいく。


チラっとハヤトの方を見ると。

難しそうな顔のまま、俯いていた。


・・・・何か知ってる?まさかね。

下っ端で裏切り者のコイツが俺より情報を知っている訳がない。

卑怯な裏切り者。



・・・・・・・・裏切り者。

もしかして俺、眞鍋さんに裏切られた?


恐ろしいフレーズが脳裏をよぎる。



そんなはずはない!

眞鍋さんが俺を裏切るなんてありえない!

だって約束したんだ!

英雄になれるって!



そもそも眞鍋さんは俺を裏切っていない。

・・・・・・・・利用していただけ?



まさか。



「うわああああああああああああああああああああっ!

そんなはずない!俺は・・・・!俺は・・・・・!」


何を叫んでも、男は俺の腕を離さない。



振りほどこうにも、力が上手く入らなくて振りほどくことが出来ない。

ズルズルと引っ張られていく。



こわい。

コワイ。

怖いよ、マリア。

マリアもこうやって無理やり脳を取り替えられた?

じゃあ次は俺・・・・・・・・・・・?



「やめてくれぇえええええええええええええええええっ!」


叫んでも誰も助けてくれない。

こんなに国の為に頑張って貢献したのに、誰も見向きもしない。

急に自分がとってもちっぽけな人間に思えた。



「いやだぁああああああああああああああ!」



まるであの時の俺みたい。

学校へ行きいじめられ、家に帰っても居場所がなかったあの時の俺。




部屋へたどり着くと、無言で腕を捲られ針を刺される。

何の説明もなく、点滴をされる。

俺はそれを抜こうと手を伸ばすと、ハヤトに押さえつけられた。



「大丈夫。それは毒でも何でもない。

本物の栄養剤だよ」


憐れむような目でこちらを見ている。



「何だよ・・・・・・。何でお前がそんな事わかるんだよ・・・・・」


泣きそうだ。

涙は流れないけど。


ハヤトの事を信頼している訳ではないけれど、言う事を聞き大人しく点滴を受ける事にした。

気のせいか徐々に身体が楽になってきた気がする。



「点滴が終わるまでゆっくり休んでいたらいい。

これから強敵と戦う事になる」


そう言うと、ハヤトも空いている椅子に腰掛けた。

室内は俺とハヤトの二人っきり。



「嘘だよなぁ・・・・。

今眞鍋さんも慌てて、ついデタラメ言っちゃただけなんだよなぁ・・・・」


同意してくれよ。

とても心細いんだ。



「漆黒の翼を使うと、脳が劣化してしまうみたいなんだ」


嘘だろ?

だって俺はこれからバラ色の人生が待っているはずなのに・・・・。



「涼はずっと討伐してたからね・・・・」


そんな事って・・・・・・。

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