真実 3

お腹がすき食堂へ向かうと、すでにハヤトはもう食べている最中だった。

・・・・役立たずの癖に、先に食ってんじゃねーよ。


今日は討伐をしていない。

だからいつもよりたくさん食事をとり、栄養を吸収しなくてはならない。

目の前には無数のお皿。

それを1枚ずつカラにしていく。



ハヤトは一足先に食事を終え、席をたった。

相変わらず顔は浮かないまま。

・・・・久しぶりの休息なんだから、難しい顔してないでリラックスしてりゃいいのに。

これだから優等生君は。

突然こっちに呼び戻されたから、心配しているフリでもしているのか?

そうしていれば、自分は 良い子 に見られるし。




食事を終え、部屋に戻る途中で寮母さんに会った。


「久しぶりねぇ。・・・・大変だったでしょ?」


やはり疲れが隠しきれていないみたいだ。



「えぇ。でも大丈夫ですから。あの・・・・部屋の掃除ありがとうございます」


「いいのよ。私にはそれしかやる事がないから。

そうそう、さっき眞鍋さんが来ててね。

明日の朝に迎えに来るって言ってたわ。

・・・・・また行っちゃうのね」



寮母さんが一瞬寂しそうな顔をした気がした。

俺がいなくなる事を寂しいと思ってくれたのだろうか。



「わかりました。出発の準備をしておきます」



実の家族にすら愛されなかった俺を、気にかけてくれた唯一の人。




「あの、また明日出発したらまた部屋の掃除お願いします。

後・・・・部屋にあるお金、俺欲しい物ないから必要なくて。

その・・・・全部もらって下さい。邪魔だったら処分しちゃってもいいんで・・・」


なんて言えばスムーズに受け取って貰えるだろう。

わからない。

だって俺、他人に物をプレゼントした経験なんてないし・・・・。



「そんな、貰えないわよ。親御さんに送ったら?きっと喜ぶわよ」



「いや、親はもういないし・・・・。

それに・・・・その、俺にとってあれはただの紙切れでしかないので。

じゃあ・・・・」


逃げるように部屋へ入った。



これは俺から寮母さんへの感謝の気持ち。

嫌われ者で居場所がなかった俺に、優しくしてくれた寮母さんへの恩返し。

・・・・・伝わったかな?

自分の気持ちを伝えるって難しい。


朝一で朝食をおえると、すぐに部屋に戻り制服に袖を通す。

・・・・久しぶりにマリアに会える。

それしか頭になかった。



集合場所へ向かうと、何故だかハヤトも立っていた。

こいつも制服を着ている。

・・・・眞鍋さんの用事は、コイツも必要な用事って事?



訳も分からず、迎えにきた車へと乗り込む。

係員の姿はない。

城に居るのかな?


相変わらず難しい顔をしたままのハヤトと、やっとこのしんどさから開放されるとほっとしている俺。

まるで対照的。

いつもなら無視する所だけど気分が良かったから、久しぶりに腰抜けに話しかけようかと思った。

今日の俺は機嫌が良い。



「なんてお前そんなに難しい顔してんの?」


「・・・・別に。何でもないよ」


なんだそれ。



「何でもないならもっとリラックスしとけよ。

それともこれから眞鍋さんに会うから、何か企んでるとか?」


「・・・・そんなんじゃない」


じゃあ何なんだよ。



「つーかそもそもお前がそんな扱いになったのも、任務の途中で逃げ出したのが原因だろ?

お前が居ない間ミカが死に、マリアが倒れて大変だったんだぞ!

もっと自分の無責任さを反省しろよ!

どれだけ俺に迷惑かけたと思ってるんだ!」


「・・・・悪いと思ってる」


って言えば許されると思ってる?



「まぁいいよ。許してやる。今日の俺は気分が良い。

もう少しでマリアに会えるんだ。これからはずっと一緒」


「・・・・・」


心が広いよなー、俺。

だってもう少しだから。

もう少しで欲しい物が全て手に入る。



栄光も。

名声も。

そしてマリアも。

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