愛する人 2

「そんな出会いがありました。後は壁の周辺をウロついていた時、

兵士に保護され、そのまま眞鍋の所へ強制送還され・・・・・現在に至ります」


「そうでしたか。それはお疲れ様でした」


「後・・・・・土の国の人の事なのですが、カヤという女性を知っていますか?」


「カヤ?」


「えぇ。何かそれなりの地位の人なのかな~?と気になったので」


「土の国は・・・・・・実は王の名前すら知らないのです」


「えっ」


「何せ、文明が遅れた時代遅れの国として有名ですから、眼中にもないと言いますか・・・・」



この会話をカヤが聞いたら、

「これだから固定概念に縛られた馬鹿は~!」

と怒るだろうな。

笑いそうになるのを、グッとこらえた。




早見さんと別れた後の事をダイジェストで話し終えると、僕はベッドに横になった。



「・・・・なんかハヤトさん変わりましたね。以前とは違う」


「どんな風に?」


「肩の力が抜けたというか何というか。良い感じだと思います」


早見さんはニタ~っと笑う。

この笑顔を見るのも久しぶりだ。




「さてお互い話したい事は一通り話しました。

今日はゆっくり休みましょう。

明日からの事ですが、マリアと涼、私とハヤトさんでペアを組み討伐に向かいます。

脳と身体の劣化を抑える為にも、ハヤトさんは討伐をした フリ をする。

風の国が攻め込んでくるまで、なんとかつなぎ遂げましょう」



早見さんはカバンをゴソゴソと漁ると錠剤を取り出した。



「本当は点滴で流し込みたい所なのですが、私は医療資格を持ち合わせていないもので。

しばらくはこの錠剤と食料でエネルギーを補って下さい。

なんとしてもハヤトさんだけは崩壊して欲しくありません」



僕は遠慮する事なく錠剤を受け取ると、それを水で流し込んだ。


死にたくない。

生き残るんだ。

そしてまたカヤと再会をし、僕のやりたい事を1つ叶えてもらう。


あ~身体が重い、フラフラする。

それにイライラも止まらない。

クソ!



無理やり身体を起こして制服を着る。

前まではこんな事なかったのに。

日に日に疲れが蓄積されてるみたいに怠い。

討伐するのを休みたいところだけど、気になるのはマリアの事。

戻って来たマリアはまるで別人みたいだ。


そしてもう一人気になるのがハヤトの事。

突然目の前から消えといて、あっさり戻って来やがって!

消えていた間なにをしていたのか?問い詰めてやらないと!



重たい身体を引きずりながら、レストランへと歩く。

室内を見るとすでにハヤトと係員が朝食を食べていた。



久しぶりにハヤトの顔を見た途端、怒りが沸き立つ。

スタスタハヤトの座るテーブルまで行くと、



「おい!お前今まで何やってたんだよ!」


派手に怒鳴り散らした。

すると、係員はすっと立ち上がり



「涼さん落ち着いて!こいつと気軽に喋ってはいけませんよ!

こいつは任務を途中で投げ出した罪人です。喋ると汚れてしまう!

今はただ人手が足りないから合流しただけで、人手が潤い次第こいつは監獄へ送り返される運命。

会話するなんて時間の無駄ですから!

ほら、早くハヤト飯を食え!涼さんとマリアさんがお食事をする時間なんだ!

お前みたいなクズが居たら邪魔になるだろ!」



「・・・・すいません」


ハヤトへペコっと頭を下げると、食事を急いで口の中に詰め込み

係員と共にレストランを後にした。



・・・・惨めなものだ。



あの優等生でエリートなハヤトが今じゃあんな扱い。

世の中どうなるか、わからないもんだね。



運ばれてきた朝食を食べ始める。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る