落とし穴 7

日。

2日連続で学校を休むなんて、許されない。

体調が悪いとかそんな事は、関係ない。


両親が仕事で出かけ、お手伝いさんが来るまでの空白の10分間。

いつもなら、兄の部屋に向かう所なんだけど、昨日の事もあり、行く気になれなかった。



・・・・まだ、兄は泣いているのかな?・・・・。



泣きじゃくったあの兄の顔と声が、頭から離れない。




僕が朝食を届けなくたって、お手伝いさんがきっちり3食食べさせてあげてるんだ。

今日くらい、行かなくたって平気だろう。


それに母親はいつも同じ朝食を作るにも関わらず、お手伝いさんは兄の為に、

毎日違う献立を考え、それを作る。

母の作る朝食より、数倍美味しいに違いない。



母親の作った朝食を、手をつけないまま残す。




「おはようございます」


いつもの時間、お手伝いさんはやってきた。



「おはようございます」


挨拶を済ませると、ソファに座り登校する時間までニュースを見ながら時間を潰す。

別にニュースに興味がある訳じゃない。



ただ、ここでアニメや別の物を見ていた事を、お手伝いさんから父にチクられたら、後々うるさいから。

ニュースを見ていれば、褒められやしないけど、怒られる事は無い。

ニュースはただ見ているだけ。

内容なんて、入ってこない。



今日は、昨日の事もあり、上の空。


登校中。

1人で学校まで歩いていく。



クスクスクス・・・・・。

なんか、今日は周りが騒がしい気がする。

皆がコソコソ話、笑ってる。

・・・・気のせいかな?



玄関に入ると、上履きがなくなっていた。


ん?誰かが間違えて履いちゃったとか?

来客用のスリッパを借り、廊下を歩く。




教室に入ると、


あれ、机がない・・・・・?


呆然と立ち尽くしている僕をみて、クラスメイト達はクスクス笑う。


なんで?

どうして?

1日学校を休んだから?

何処に僕の机はあるんだよ?

どうしたらいいか?何もわからない。



「黒板見てみろよ!」


誰かの声。

何をすればいいのか?どうしたらいいのか?わからない僕は、その言葉の通り、黒板を見る。



「ハヤトの兄弟は障害者ー!気持ち悪ぅ」


その文字を見て、「だからソレが何?」と心の中で突っ込み、鼻で笑った。



「家族が障害者の奴は、学校に来るなー!」

「キモイんだよー」


たったそれだけの理由で、僕はこんな扱いを受けるのか。



あぁわかった。

両親が兄の存在を消した理由。


兄の存在を消したのは、周りの奴らからこういう扱いを受けるからなんだ。

だから、隠す事にした。



・・・・つまらない、世界。

目の前の世界から、光がプッツリと消えた気がした。




翌日から、僕は登校する時間を40分早める事にした。

何が起こっても、皆が来る前に対処出来るように。

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