天誅 2

「どうして生きてるのかって?

それは女王が、アタシの事を生き返らせたの!

きっとアタシには普通の人とは違う才能があるって、気づいたんでしょうね・・・。

あ!色々秘密事項があるから、詳しくは喋れないんだけど」


自分で言ってて、恥ずかしくなる。

だってアタシは、選ばれた人間なのよ。

他の人はなる事が出来ない、特別な人間。

ママだって、それを他人に自慢する事が出来るんだから!



しかし、ママはまたしばらく沈黙した後、


「普通の人とは違う才能って、コレの事?」


そう言い、ドタバタと足音が遠ざかっていく。

何処へ向かったのだろう?

玄関の鍵を開けてくれるのだろうか?


しばらく待っていると、2階のバルコニーが開く音がして、上を見上げた。

するとそこには、ママの姿があり、久しぶり見る事が出来た嬉しさから、また自然と顔が緩んでいく。


身体がやつれ、疲れた顔をしているママ。

どうしちゃったの?

アタシがこの家に居る頃は、もっとポチャっとしてたのに。

アタシが居なくなったショックで、やせ細ってしまったとか?



「ママ!アタシは元気に暮らしてるわ!」


安心させる為、アタシが声をかけた瞬間。

ママは手に抱えていた大量の物を、こちらへと投げつけた。

ヒラヒラとまるで雪のように、それがアタシに降り注いでいく。


それは大量の写真。

舞っている最中は、それが何の写真なのか?見る事が出来なかった。

地面に落ちた一枚を手に取ると、それを見て絶句する。


その写真は、アタシが学校で無差別に人を殺している物。


いつ?

気づかなかった?

誰が撮ったの?

どうして、ママがこれを持ってるの?



一瞬で頭の中がパニックになる。



「・・・コレは何?どうしてアンタが人を殺してるの?」


ママの弱弱しい声が聞こえる。



「違うの!これは!」


弁解する為上を見上げるが、すでにそこにママの姿はなかった。

しかしすすり泣く声は聞こえてくる。

まだママはそこにいる。

ただ、アタシからは姿が見えないだけ。


・・・きっと、泣き崩れているんだ。

娘の予想外の姿に、ショックを受けたんだろう。


「違う!嘘よ!これはアタシじゃない!」


嘘をついた。


その写真は合成された物でもなく、アタシそのもので、

右手の痛みに耐え切れず、無差別に人を殺しまわった姿だった。

自分自身が犯した罪だけれど、家族に嫌われたくない。

またこの家に戻り、普通の生活を手に入れたかった。



「仕組まれただけ!ママは知ってるでしょ?

アタシがそんな人間じゃないって!」


だから、アタシは必死に弁解をする。

家族に見捨てられたくないから。



「・・・・そんな事を言ったって、もう無理よ。

ご近所さんに、貴方が人を大量に殺してる事はもうバレてるの・・・」


え?



「この写真が、うち以外にもばら撒かれたのよ」



誰がそんな事をしたの?



「それを見た人達が、毎日うちに嫌がらせに来てる」



嫌がらせ?



「裏切り者って」



裏切り者?



「自分の命を守る為に、国民を殺しまわる悪魔だって」



悪魔?




「勿論貴方は私の可愛い子よ。100%信じてはいないわ」



そうよ、アタシはママに愛されてるの。



「でも、他の人達は写真に映っている事を、信じきっちゃってる」



なら、アタシの事を守ってよ!

親でしょ?アタシの事を愛しているなら、全力で守ってよ!



「・・・そして、そんな悪魔の子を産み育てた私達に、責任を取って自害するよう、毎日押しかけてくるの。

大量の人達が」



悪魔の子なんかじゃない!

好きでこんな身体になった訳じゃないんだから!



「・・・・・・・・だから、早くココから出て行って。

貴方がココに居れば、私達が貴方をかくまったと疑われてしまう。


私達は死にたくないのよ。

まだ、死ぬわけにはいかない。

貴方は人を殺す特権があるのだろうけど、私達はただの人。

大勢に押しかけられたら、反撃する間もなく殺されてしまうわ」



やめて・・・・。

アタシの事を信じてくれているんでしょ?

なら・・・もうそれ以上は・・・・・・・・



「だから早く、ここから立ち去って!!!!」


「言わないで!!!!」



閑静な住宅街に、アタシとママの叫び声が響く。

お願い・・・・、アタシの事を見捨てないで。

アタシの事を愛して。

こんな身体になってしまった、アタシの事を受け入れて!

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