消せない傷跡 13
俺は、最初に通された客室へと向かっていた。
ミカが待っているから、そこに行かなくちゃ。
そして、確認しないとー・・・・。
ドアを開け中へ入ると、そこにはお茶が4つと資料が4つテーブルの上に置いてあるだけで、人の姿は見えなかった。
あれ?ミカ・・・・、何処に行っちゃったのだろう?
そんな事より・・・・。
テーブルの上に置いてある資料に手を伸ばす。
資料を手渡された時、俺は沸き起こる怒りを押え切れなくて、全部のページに目を通さず、グシャグシャに丸めてしまった。
もし、マリアが言った通り、5ページ目にアレが書いてあるとしたら・・・・。
恐る恐る5ページ目を捲ると、そこには
マキが虐待されていた事、その事をからかわれていた事、5年生の時イジメられていた事が、鮮明に書かれていた。
本当だ!マリアの言った事は事実だった!
・・・という事は、俺は無実のマキを無残に殺害してしまった・・・・?
「うわっ!」
あまりの出来事に、思わず資料を床に落としてしまう。
でも・・・でもでも!新しい法律を国民に浸透させる為にも、犠牲が必要だって、係員はそう言っていた!
だから、マキを殺したのは、止む終えない犠牲なんだ!
でも、マリアはマキを自分自身だと言っていた。
俺は、マ リ ア を 殺 し て し ま っ た ?
「うわあああああああああああああああああ!!!」
受け入れがたい事実に、俺は大きな声で叫んだ。
そして、その場に跪く。
怖い、怖いよ!
俺はマリアを殺すつもりなんてなかったんだ!
ただ、マリアの笑顔を見たかっただけなのに・・・・!
「どうしたの?」
その声と共に、ドアが開く音がした。
振り向かなくたって、誰が来たのか?わかってる。
ミカだ。
俺の叫び声を聞いて、駆けつけてきてくれたみたいだ。
力なく立ち上がると、
「・・・・なんでもないよ。もう帰ろう・・・・疲れた」
先ほど起った出来事を、話す気力が無かった。
どんな顔をしていたのか?わからないけれど、俺と目が合った途端、ミカの顔が引きつっていたから、とても酷い顔をしていたんだろう・・・と思う。
ただただ、ホテルに帰ってシャワーを浴びたかった。
身体中についた血痕を洗い流したかった。
そして、眠りにつきたかった。
翌日。
ドンドン!!・・・という激しくドアをノックする音で目を覚ました。
誰かが、俺の部屋のドアを叩いている。
これが、マリアだったらどうしよう。
もし、昨日の出来事を怒り、俺に復讐しに来たとしたら・・・・。
そんな不安な気持ちになりつつ、恐る恐る部屋のドアを開くと、
「おはようございます。ご気分はいかがですかな?」
薄笑いを浮かべた係員の顔が見えた。
「・・・なんだ、貴方ですか。どうぞ・・・・」
来客が係員だとわかった途端、身体の力が抜ける。
あぁ、こいつも来たんだ。
昨日居なかったから、この街には来ないと思ってたのに。
部屋に招き入れると、
「私の顔を見て、そんなに脱力するなんて失礼ですね」
と、言いながら、気持ち悪い笑い声を発する。
彼なりの冗談なのだろうけれど、昨日の出来事がまだ頭の中に引っかかっており、笑う事が出来ない。
そんな俺の事なんて、気にする事なく、
「私も先ほど急遽こちらの街に入りましてね?
またしばらくの間、皆さんをサポートする事になりましたので、よろしくお願いします」
「あぁ・・・」
話を進めるが、係員の声が全く耳に入らない。
「では、昨日の結果の確認をしに参りました。
えーっと、○○小学校の討伐数が38体でお間違いないですか?」
「あぁ・・・」
「遺体の方はすでに片付けを済んでおります。
今日は、○○中学校、○○高校の2つの討伐を予定してます」
「あぁ・・・」
「で、マリアさんの件ですが、精神的負傷が大きく、現場に立つのが困難と判断した為、一度真鍋さんの所へ送り返す事になりました」
「あぁ・・・・え?」
マリアという名前を聞き、フリーズした頭の中が急激に冴えた。
精神的に負傷しただって?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます