消せない傷跡 8

「痛いでしょ?待ってて!今、救護班に連絡をする!

訳を話せば、もしかしたら女王様が魔法でなんとかしてくれるかも知れないし!

もしそれがダメでも、きっと真鍋さんなら、理由を話せば、義足を作ってくれ・・・・」


そう言い、マリアが立ち上がろうとした時、



「待って、・・・ここに居て。・・・いいの、ありがとう」


マキはマリアの腕を掴んだ。



「早くしないと、出血多量で死んじゃうわ!」


マリアは酷く焦っていた。

どうしたのだろうか?

一方のマキは、まるで死を恐れていないみたいで、落ちついた顔をしている。


「いいの。私は・・・・・、このままでいい。

貴女は、義足なのね。

頭の下の・・・、膝枕がゴツゴツしてるから・・・・」



マキの言葉を聞き、マリアはハッとした顔をすると、


「ごめんなさい!この足じゃ痛いよね。

何かクッションになる物は・・・・」


マキの頭の下に、空いてる方の手を入れると、キョロキョロ辺りを見回す。

すると、マキはフフっと笑いながら、


「痛くないわ。このゴツゴツしたのが凄くいい。

ありがとう、気を使ってくれて」


マリアの腕を掴んでいた手を離すと、顔まで手を伸ばし頬をなでる。



窓際に居る3人も、マキとマリアの事を震えながら見ていた。

彼女達が震えている理由は、イジメっ子であるマキを恐れているのではなく、

本当は自分達が嘘をついた事がバレ、殺される事を恐れての物だとしたら・・・・・?

そんな考えが頭の中を占拠する。


いや、どちらにしても殺すしかない。

この不祥事を、見られたのだから、生かしておく理由はない。

イジメっ子、イジメられっ子なんて関係ないんだ!

もう、この場に居るマリア以外全ての人間をぶっ殺してやりたい。

じゃないと、この不安な気持ちが、解消されない気がする。



マキの討伐が 間違い による物にしたって、何かを変える為には犠牲も必要だと、係員のオッサンも言っていた。

これは何かの手違いなんだ。

マキは、今起っている改革により犠牲者の一人、そう考えれば・・・・。


俺は、自分が安心出来る 理由 を探していた。

しかし見つからない!

やはり、殺すしかないー・・・・。


右手の剣を出したまま、俺は窓側の方へ歩き始めた。


「きゃっ!」


3人の目の前まで歩くと、か細い悲鳴を上げる。



「理由はわかるよな・・・・・。

お前達を生かしてはおけないから・・・」


ただ、それだけ言うと、手始めにサヤの髪の毛を左手で鷲づかみにすると、強制的に立たせた。

サヤは必死に両手で、俺の左手を引っかき、離させようとする。

無駄な抵抗だ。

カナコは無言でこちらを見上げていた。


すると、その隙を見て、ヒトミは立ち上がり、逃げようとする。



「勝手に動いてんじゃねーよ」


そのヒトミの背中に、剣を突き刺す。



「あぁっ!」


悲鳴と共に、立ち止まるヒトミの背中から、剣をすばやく抜き取ると、首を跳ねた。

さっきまで、動いていた人間が、首と胴体を切り離すだけで、動きが止まるなんて、不思議な光景。



「いやぁああああああっ!」


その様子を見ていたサヤが、大きな声で悲鳴を上げた。

さっきから、奇声しか上げない。

うるさい女だ。



「うるさいよ」


そう言うと、サヤの喉に剣を突き刺す。


「ぐはっ・・・・」


空気が漏れるような音を最後に、サヤは声を発しなくなる。

ようやく静かになった。


喉から剣を抜き、鷲づかみにしていた手を離すと、サヤは喉から血をゴポゴポ噴出しながら、倒れていく。

人間噴水。

そんな言葉が、この女にはピッタリだ。



残るはカナコのみ。

カナコに視線を移すと、微かに震えてはいるものの、不思議と落ち着いていた。

目の前の光景を見て、もう覚悟を決めたのだろう。

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