第89話お友達 3

「そういえば、任務先って涼の出身地なんだったっけ?」


俺の事なんて、どうせ興味なんてないだろう。

そう思っていたから、まさかそんな事を言われるとは思わなかった。




出発前。

車に乗り込むと、、突然真鍋さんが車のドアを開いた。


「そうそう、任務先なんだけど、涼君の出身地だから。

涼君は一番頑張ってくれてたからね。

女王様の配慮から、そこを一番最初に裁くと決めたのよ」



爆弾発言を投げつけてきた。

・・・・・女王様が・・・・?

女王様も、俺の役割を認めてくれたというのか!

嬉しくなる。



「思いっきり、悪しき心を持つモンスター達を滅ぼしてきてちょうだい。

後、任務以外の時は自由だから、会いたい人が居たら自由に会ってきていいわよ」



そう言うと、車の扉を閉めた。

心おきなく、モンスター達を滅ぼす事が出来る。

嬉しい・・・・・、やっと俺をイジメて来たあいつ等に復讐する事が出来るんだ。




そんな余韻に浸かっていたというのに、ハヤトのビックリ発言に、急に気分は重たくなる。

出身地だからなんだよ・・・・・。

何が言いたいんだか・・・・・。



「だから何?」


素っ気無い返事をすると、



「いや、家族とか友達に会いに行くのかな~って思ってさ。

ずっと会えてなかっただろ?羨ましいよ」


爽やかな笑顔を浮かべるハヤトが、俺は憎らしくなった。



家族?

友達?

なんだよ、ソレ。

会いたい人間なんて、一人も居ねぇよ。

あいつらのせいで、俺は生きる事が苦しくて仕方がなかったんだ。

会いたい訳ないだろ。



むしろ、あいつらをこの世界から消してやりたい。

邪魔な奴らは消えろ。

俺の生きる邪魔をする 物 全て、この世界から抹消してやりたい。


真っ黒な過去は全て消して、新しい人生を手に入れるんだ。

この国の英雄になる。

英雄が、元々イジメられっ子なんてカッコ悪いだろ?

だから、消してやる。

邪魔な 物 全てを。


あー・・・・うるせぇな。

任務先へ向かうまでの間、車の中で寝てようと思ったのに、

ミカのうめき声が気になり、結局一睡も出来なかった。



痛いのはわかる。

自分の指が切られて、痛み止めも何もして貰えないなんて考えたら ゾッ とするし。

でも、ミカの場合は自分が悪いんだから、同情なんてしない。


何故、同級生が自殺するまで、イジメに追い込んだ?

自殺させるなんて、どう考えたってやりすぎだ。

自分がやられて嫌な事を、あいつはやったんだ。

まだまだ生きていたかった人間の 生きる場所 をアイツは奪った。

だから、一生その痛みに苦しめばいい。



ハヤトはミカの事を気にかけていたみたいだけど、

俺とマリアは、ミカの事をチラ見すらしなかった。

だって、興味ないし・・・・・つーか、むしろ存在自体をウザイと思っているから。


車に揺られること数時間。

ようやく、任務先である、俺の地元に到着した。

大嫌いな人間と、忘れたい過去で溢れている地元。

俺が、裁いてやる。

この手で。





今日は移動日。

任務先に到着した後は、明日の朝までホテルでゆっくりする事を許されていた。

真っ直ぐ、ホテルの部屋に直行しようとすると、



「あれ?もう部屋に入るのかい?」


お節介ハヤトが声をかけてくる。

余計な事を・・・・。



「あぁ。夕食まで、一眠りするよ」


ミカのうめき声で眠れなったし、特にやる事もない。

飯さえたくさん食っとけば、漆黒の翼に食われる事もないから。



ミカは右手を庇いながら、ホテルへタラタラと歩いている。

つーか、あの状態で任務出来るのか?

ミカの分まで、モンスターを討伐するなんて、ゴメンだからな!


マリアはすでに、隣をすり抜け、カウンターで自分の部屋の鍵を受け取り、エレベーターへ向かう所だった。

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