第61話王女 2

「リサ様。久しぶりに女王様のお部屋にでも行きませんか?

先ほど、尋ねましたら、会いたがっておりましたよ」


私の身の回りの世話をする召使が、部屋にやって来たと思ったら・・・・言う事はいつもコレ。



「行かないわ。お母様は私と一緒に居るより、国民と接する方が好きなのよ」


だって、小さい頃からそうだった。

いつも、国民を優先してばかりで、私は一人ぼっちだったから。



「そんな事はありませんわ。

女王様は、いつもリサ様の事を考えて・・・・」


お母様をフォローする召使に、



「何も知らなく癖に!!私がどれだけ、孤独だったか、貴女は知らないでしょ!!」


そこら辺にあったクッションを投げると、ベッドの中にもぐりこんだ。



誰も、気づいてくれない。

私が、どれだけ一人ぼっちで寂しい思いをしてきたのか。

こんな気持ちを理解してくれる人なんて、誰も居ないんだわ。


周りから見たら、水の国の王女である私は、羨ましがられる存在だけれど、

私からしてみたら、そんなの建前、飾りに過ぎない。


本当は、普通の家庭に生まれたかった。

魔法なんて使えなくていい。

貧乏でもいい。

綺麗なお洋服なんて、着れなくたっていいの。

私が眠るまで、ずっと手を握っていてくれる、そんな母親が居る家庭に生まれたかった。


皆、私がそんな事を思っているなんて、考えない。

誰も、私の本当の気持ちに、気づいてくれる人なんて居ない。

どこに居ても、一人ぼっち。




パタン。



扉が閉まる音が聞こえた。

召使が、部屋を出て行ったんだわ。


私の事を慰める事もなく、部屋を出て行くという事は、

きっと、あの召使。

私の事を、 わがままなお嬢様 と、思ったに違いない。

また、自己嫌悪。

どうして、私は嫌われてばかりなのかしら。



私は、 我慢 しかする事が出来ない。

王女なら、もっと好き勝手できると思ったのに。

まるで、籠の中の鳥。

自由に飛び立つ事も、何も出来ない。


私、いつも行っていたのよ。

お母様のお部屋の近くまで。


いつも後、数メートルで部屋に到着するって所まで来たら、足が動かなくなる。

もう少し歩けば、部屋に辿り着くのに。



きっと、お母様は、私と会っても喜ばない

また、私より国民を優先したら・・・・



そんな考えが、頭を過ぎって、前に進む事が出来なくなる。


本当は、顔を見たい!

手に触れたい!

抱きしめられたいのに!・・・・、私には、それすら出来ない。




そんな私とは、対照的に、


ほら、今日も来た。

お母様の部屋の前まで、ゾロゾロ歩いてくる国民達。


お城の門は、24時間常に開放されている。

門番は居るものの、大体の国民が自由にいつでも出入り出来るのだ。

ドウ見ても怪しい人間は、門の前で止められ、中に入る事は出来ないけれど、

大体の国民は、通行可能。


それも、国のスローガンに 王族も国民も、皆平等 と、お母様がかかげたから。

そんな事、言わなければ良かったのに・・・。



それをいい事に、国民達は、朝夜関係なく、お城へ押しかける。

国民に 時間 なんて関係ないの。

モラルもない。


勿論、私達の顔が見たくて、訪れる訳ではないわ。

そんな理由で来る人たちなんて、ごく一部の人だけ。


後の人は、違う。

お母様の魔法を当てにして来る。


お母様に会いたいんじゃないのよ。

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