第32話アリス 2
どれくらいの時間が流れたのだろう?
皆はいつもの生活に戻った。
食事以外は、ずっと、いつもの部屋に閉じ篭り、ただ床を見るだけの生活に。
私は相変らず、床に這いつくばったまま。
「ほら、マリア、ご飯よ」
そう言い、シスターはご飯を床へと散乱する。
それを食べろという意味なのだろうけれど、足の痛みで意識が朦朧とする中、
食べる気力なんて無かった。
トイレなんかに行けるような状況ではなく、汚物も垂れ流しの状態。
そんな私を、皆見て見ぬ振りをした。
一緒の部屋で、ずっと暮らしていたのに・・・・こんなモンよね。
しばらくの間、動かなくなったアリスと一緒に居たのだけれど、
「腐る前に、始末しないと、虫が湧くわ」
そんなシスター達の声と共に、アリスは私の目の前から姿を消した。
多分、この施設周辺のどこかに埋められたのだと思う。
ねぇ、アリス。
自由になれた貴方は、今幸せだと感じている?
貴方が居なくなって寂しいけれど、貴方が幸せと感じているのなら、私はそれを嬉しく思うの。
そして、近いうち、私も死ぬのだろうと思っていた。
誰も、傷の手当なんてする事もないし、ご飯も食べなければ、水分も取れない状態だから。
こんな哀れに死んでいく私は、最高の見せしめの 物 になっているんだろう、そうも思っていた。
何故、私は生まれてきたのだろう?
私の価値は何だろう?
そう、神様に問いかけたその時だった。
バタバタと走り回る音が聞こえる。
それも、一人二人じゃない・・・・もっと複数の足音だわ。
それと共に・・・
「やめて下さい!」
いつも怒鳴ってばかりの、シスターの声も聞こえる。
どうしたのかしら?
シスターが悲鳴を上げるなんて、強盗?
もしそうなら、お願いだから、強盗さん。
私にトドメを刺して。
一刻も早く、この苦痛から開放されたいわ。
しかし、状況は私が思っていた物とは、違う方向へと歩き始めた。
「・・・・こっちに人が倒れているわ!」
「大丈夫?しっかりして!」
そう言い、私の首や手首を誰かが触る。
私はその問いかけに答えなかった。
だって、もう、生きたくないのだから。
それなのに、
「早く、担架をこちらへ!」
知らない誰かは、私を必死に助けようとした。
そんな事しなくていいのに。
またこの苦しい世界で、生きさせようとする、この人物は 鬼 だわ。
抵抗する事も出来ず、私はドコかへと運ばれて行った。
そこへ辿りついた後、たくさんの大人達が、
「・・・手遅れ・・・・」
「・・・足を切断するしか・・・」
そんな会話をしていたけれど、私は何一つ驚かなかった。
どうなったっていいの。
私なんて、どうでもいい。
もう、生きる事 を諦めていたから。
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