夜叉九郎について:前篇

夜叉九郎やしゃくろうという青年が、街の人達に発見されたのは、街外れの森だった

言葉は通じるが、あきらかにこの世界の者ではない服装に、興味をもった発見者達は、事情を聞こうとしたが、ホウジョウという敵と戦うために、戦支度を整えていた時に、急にこの地にいたというていで、要領を得なかった

やがて、発見者の1人が

笑岩しょうがんさんところにいる、三楽斎さんらくさいという人に、同じような話を聞いたなあ』

と言う訳で、三楽斎に会う事になった夜叉九郎は、一時同僚だったらしいと知り、自分がここに来た後、戦がどうなったか、尋ねた

『ほう、俺の予想通り、ホウジョウは倒されたのですな』

『うむ、私がこの目で見たのですから、間違いない』

『それで、ここは何なのです?人も言葉は通じるが、見た事もない異相ですよ』

『笑岩さんは、サカイでみた南蛮人みたいとか、言ってたが、どうやらこの地は、我々のいた世界ではないらしいのだ…

うーん、あの本はどこだったか』

と、三楽斎が捜し物をしてると、お茶を持ってきた少女が

『おじいさん…、そこ…』

と指さした

『おお、すまないな

夜叉九郎さんとやら、私達の前にこの地にきた者が、あなたのような方のために、本を書いたのだ

これを読めば、この世界と、そこでの暮らし方が一通りわかる』

と、初心者スターターブックと表紙に書かれた本を、差し出した




1月が過ぎ、自分と同じような境遇の人や街の住民と交流し、新しい暮しに慣れ始めた夜叉九郎だったが、彼の住んでいた街に危難が迫っていた

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