妖精の騎士 蒼き瞳の姫君

作者 六畳ひとま

優しく丁寧な言葉と文章で紡がれる少女の成長譚

  • ★★★ Excellent!!!

異世界ファンタジーモノではありますが、魔法もチートもありません。
(不思議な現象は起こりますが)
緻密に錬られているであろう確かな世界観の、とても上質なハイファンタジーです。

無邪気なほど世間知らずな少女アルセナに、最初正直多少のいらだちを覚えました。
夢は叶う、想いは報われる。
そう信じて疑わず、世界の厳しさを知らず、大人たちの気遣いや心配を侮られたとすら感じて反発を覚えている姿は本当に甘ちゃんそのもの。
冒険者だと胸を張る割に、剣を振るう技術も覚悟も未熟。生活能力もほとんどないし、お姫様と揶揄されるのが当然と思える危機管理能力のなさ。

そんな少女が夢を叶えるべく降り立った地で、その未熟さを愛しいものと思ってくれる優しい人たちに助けられて旅をして、たどり着いた先にあったのは、伝説は伝説でしかなく、夢見たものはなかったという現実。
夢が潰え、悲しみに暮れるアルセナには、それでも泣ける場所があり、慰めてくれる人がいる。

けれど疎ましくすら感じていた庇護を離れた途端、アルセナは残酷で容赦のない世界の姿を知る事になった。
想像したこともなかったような、酷い暮らしをする自分と同じ年頃の少女との出会い。
自らの無知を恥じてもどうすることもできない悔しさ。
そして何もできないままに虐げられ、奪われていく弱き者達の命。

許せない、と怒りに任せて振るった刃は自らに向き、追われる身となったアルセナは全てを失い絶望のままに森を彷徨う。
そして幼い夢が潰えた場所にたどり着いた少女は、自分自身が望むことを自覚し、不思議な力に導かれて師匠と呼べる人物に出会う。

ここからが、本当の始まりなのではないかという気がします。
戦う力、生き抜く力を身に着けた少女が、どのような旅路を往き、そしてどこに辿り着くのか。是非見届けたいと思います。

:::

文章力、表現力の高さに羨望してしまいそうです。とってもお上手です。
そしておそらくとても詳細な設定があるのだろうけれど、それをつらつらと並べ立ててひけらかすことはなく、それらを踏まえた上で分かりやすく丁寧に物語が描かれているから、破綻の気配はなく、安定して感じます。読みやすい。
加えて、登場人物は其々に魅力がある様に感じますが、決してキャラ萌小説ではないんですよね。こういう硬派な物語、大好きです。
人々の置かれた状況の過酷さが克明に描かれていて辛くなります。ネタとしては、目新しいものではない。けれど生半可な描き方では、ここまでぐっと胸に迫ってくることはないと思う。これは本当に、作者様の力量があるからこそ、なのでしょうね。

とてもいい文章を読ませて頂きました。ありがとうございます。
続きも楽しみにしています。
(第7章の3まで読了)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

hyuさんの他のおすすめレビュー 6